BURAIなやつら / あまね翠
BURAIなやつら 流浪の王女
「神の国」として絶対不可侵のもと繁栄を築いてきたシルディーヌ神王国は、軍事大国ゾルファーンによって、一夜にして壊滅させられた。かろうじて、敵の手から逃れることができた王女ルティアナは、少数の共の者をつれて、ルクレチオ王国へ渡ろうとしたが、王家の血筋を狙う者に執拗に追われ、一人、また一人と従者が倒れ、最後の一人が倒れそうになったとき、ルティアナの元に現れたのは「紅鬼」という双つ名を持つグレイで……
奪われた王国を奪還するために、男装した王女と傭兵が旅をするお話ですが、はじめの悲劇的な物語が、あまりにも展開早くて、ダイジェスト版みたいになってるのはもったいないなあ。もうちょっといろいろ書いてくれたらと思わなくもないですが、作者が書きたかったのは、ひょっとしたら、中盤以降の旅物語だったのかもしれませんね。序盤の悲劇とうって変わって、旅路に出てからのお話は、生き生きと描かれてましたから。
ケチくさくて意地汚いけどやるときはやってくれる傭兵グレイと、途中で出会った美しい人だったら男でも女でもOKという、軽いけどいろいろと侮れない美青年カナルと共にする道のりは、ユーモアに溢れてて面白かったです。真面目なルティアナが、ツッコミながら振り回される様が楽しい。
道中で不正な領主をみつけて……と、某黄門さまのようなお話になりますが、脇の二人に任せっきりじゃなく、ルティアナ本人がむしろ危険の真っ只中に飛び込んでいくところは、意外でしたが、それだけ心痛めてたってことなんだろうなあ。今まで知らなかった人々の苦労を肌で感じて、身を挺してでも人のために何かしたいと、願う姿は心打たれるものがありましたね。
自分が辛い思いをしていたとき、自分よりもさらに辛い思いをしているだろう人から、優しい声をかけられたときの心情とか、ほんと良かったです。
展開としては王道というかオーソドックスなので、物足りないところもあるんですが、それでも面白く読めたのはキャラクタの魅力と、人と人との温かさを感じられたからでしょうね。人助けといいつつ、やってることは盗賊だったような気がしますが、まあ、それはそれ。楽しいお話でした。
最後のほうで、とある秘密みたいなものが明かされましたが、シリーズになるとしたら、それに関するお話になっていくのかな。まだまだ命狙われてるし、敵討ちもしたいだろうから、いろいろ膨らませそうですね。このキャラたちの旅であれば、面白くなりそうなので、できれば続きが読みたいな。
第1回小学館ライトノベル大賞ルルル文庫部門期待賞受賞作。
BURAIなやつら 貴公子の謀略
従兄弟のユグノスの手によって、国を襲われたルティアナが、助けを求めるために、叔母が嫁いでいる隣国へと向かっていたら、盗賊に襲われている旅芸人の一座を助けたら、ルティアナの騎士であるフィルに出会った。久しぶりに出会えた仲間に歓喜したルティアナだが、騎士であるフィルは、素性の怪しい傭兵のグレイたちに嫌悪を表し、グレイもまた騎士の態度に不満をもって……
国を奪い返すために、単身、城を抜け出した王女ルティアナが、傭兵グレイやお調子者貴族カナル、傭兵集団長の息子サイラスと、逃亡の旅をしていたら、ルティアナの騎士であるフィルの登場で、一行に分裂の危機が訪れるお話。
いやまあ、フィルの気持ちも分かりますよね。路銀がなくなったからと言って、イカサマ博打で稼ごうとして、あまつさえ、姫であるルティアナにまで手を汚させようと言うんですから、グレイたちを見て悪影響を及ぼす輩という判断は、むしろ正しいのかもと思ってしまう僕がいる。
ただ、だからといって、グレイたちが今までやってきたことを否定するような言動は良くないよなあ。今まで自分がルティアナを守ってきたのに、後れてきた分際で、グレイが面白く思わないのもわかりますよね。まあ、グレイの気持ちは、ルティアナを思うがゆえの嫉妬がかなり見えてましたけど。
始めはそれほど気にしてなかったのに、段々とルティアナへの思いを自覚していって、戸惑うところには笑わされるばかり。いや、真剣に悩んでるんだろうけれど、ごつくて荒々しい男が、恋に悩む姿を想像しちゃうと……頬緩みますよね?
グレイとフィルの間を掻き回すカナルの行動に、趣味が悪いなあと思いつつ、どうなるのか興味津々でした。
ぶっちゃけ、こっち側の話が気になってしまったので、本来の話であるカナルと弟ユーリの確執についてが、イマイチ興味をもてなかったなあ。サブタイトルに謀略ってあるけど、それほどのものでもなかったからかもしれないけど。
とはいえ、権力争いに巻き込まれて、いつしか冷えていった兄弟の間柄が、再び温かさを取り戻せるかもという希望を見せてくれたところは良かったですね。ルティアナの言葉は、甘いようにしか思えませんが、信じてみたくなるものがあるのは、人柄なんだろうなあ。
だからこそ、囚われの身となったルティアナを助けに行くとき、誰一人として躊躇しなかったんだと思います。あの大一番は、強引な気もするけれど、一丸となって動く姿が見れて、良かったなあ。特にサイラス。あんた格好良すぎだよ。クチは悪かったりするけれど、一番役に立ってましたね(最後の女装も含めて)。
お互い後悔を胸に抱えているのが見えていただけに、グレイとルティアナが、最後に手を取り合えたことは、嬉しく思いました。
ただ、個人的には、もうちょっと恋愛要素は引っ張って欲しかったかなあ。引き延ばしじゃないですけど、ジリジリさせられるような駆け引きというか、やり取りみたいなものがもっとあってくれたら、すっごい好みだった……って、完全に好みの話ですね。はい。
続きは……どうしようかなあ。キャラ同士の掛け合いが楽しい冒険ファンタジーでしたが、いろいろ物足りないところもあるので、手に取るかどうかはそのときの気分次第かも。あ、でもスイレンの正体は気になる……。
BURAIなやつら 終焉の聖地
ルクレチオ王家に嫁いだ叔母なら、きっとシルディーヌを救うための援軍を出してくれる―そう思っていたルティアナだが、すぐ目の前にあるにもかかわらず、ゾルファーン軍の兵士の目が多く、王宮までの道のりは遠かった。なまじ近くに見えるため焦燥ばかりが募っていったある日、傭兵集団スラーナの一族が、ルティアナたちを追ってきて……
奪われた国を取り戻すために、傭兵グレイやお調子者貴族カナル、傭兵集団長の息子サイラスと共に、隣国へと逃亡の旅を繰り広げていく王女ルティアナの物語の最終巻です。
ああ、ルティアナとグレイの間の空気がやさしくていいなあ。お互い気になってるのに、身分とか、これから成すべきことを考えてしまって、必要以上に進めないあたりが、なんとももどかしく、なんとも切ない。
そのあたりは、とてもよかったんだけど、肝心の目的地であるルクレチオ王国での出来事は、ちょっと物足りなかったかなあ。ゾルファーン帝国を取るか、シルディーヌ神王国を取るかといったあたりがほとんど描かれていなかったので、なぜそっちを?という理由が……ね。できれば、もうちょっと政治劇がほしかったです。
とはいえ、王女としての誇りを忘れず、それでいて毅然とした態度で、ルクレチオ王国の議会へと乗り込むルティアナの姿には、心打たれるものがありました。真実を知ったことで動揺していたグレイが、彼女の姿を見て、ひとつの決意をするあたりも、良かったです。
ちょっと、ご都合かなと思うところはあったんだけど、仲間がいたからこそ乗り越えることができたという展開と、好きな人と共にという思いが伝わってくる最後が素敵でした。このあと二人が、どういう旅を続けていったのか、想像すると楽しくなりますね。
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