アスラクライン / 三雲岳斗
アスラクライン
中学生になる直前の春休み、僕の乗った飛行機が海に堕ちた。一緒に乗っていた幼馴染の操緒とともに。
助かった僕。助からなかった操緒。
だけど、操緒は幽霊になって僕にとり憑いている。
高校に入るとき、一人暮らしをすることになった僕。記念すべき引越し当日の夜に、きれいな女性が僕の目の前に現れ、トランクを渡された。
「それは最初からあなたたちのものよ」
操緒が見えた人間に出会うのは、これがはじめてだった……。
僕の平和な日常はそのときまでだった。
期待に胸を膨らましてしまう第一章。そしてそれは裏切られることがありませんでした。
面白い。めちゃめちゃ面白い。予想外の展開や予想内の展開。
それら含めてワクワクドキドキの学園もの(?)。
続編も大いに期待したいシリーズ第一弾。
アスラクライン 2 夜とUMAとDカップ
土琵湖に現れた未確認生物(UMA)。ソレに対して生徒会長は科学部に依頼してきた。
「明日より三日以内に、この未確認生物を捕獲あるいは駆除してくれたまえ」
わずかな手がかりが示す UMA は全長約 9メートル。そんなものと対峙しなければならないのか。くしくもその場所で新入生のオリエンテーリング合宿が開催されることが決定していた。一般生徒に被害を出すわけにはいかない。
費用その他をすべて生徒会に出させた朱浬は、さっそく行動を開始したが……。
やりたくないけれどもやらないわけにはいかない。例え友を失うことになっても。
そんな決意を胸に秘めて動いているのは智春だけで、周囲は妙に浮ついてる。
部活が一緒のせいか、嵩月と智春は付き合っているってな噂が流れ、
会長に「嵩月と付き合うな」なんて言われたおかげで、妙に意識してしまう智春。
そして操緒はもちろん、嵩月も智春を見つめてくる。
「夏目くん、となら……わたしは……」
二人っきりのときにこんなこと言われたらどうしましょう?どうすればいいの?
この辺りの三角関係はなかなか微妙で面白い。しかももうひとり入ってきそうな予感。
美少女たちに囲まれながらどこか不幸な高校生活シリーズの第二巻。面白すぎ。
アスラクライン 3 やまいはきから
呼び出さしたくせに一向に現われない朱浬。
しかたなしに家に帰ると、庭先に女子高生が倒れていた。
「これって……朱浬さん……だよねぇ?」
何があったのかわからないけれど、とりあえず家に連れて行ったが、目を覚ました彼女は言う。
「あの……あなたの名前は?」
どういうこと……?
卑怯者!と思わず膝を打ってしまうネタを使った展開。
朱浬の変わり果てた姿にニヤニヤが止まらない。
そこで繰り広げられるちょびっとエッチでお約束たっぷりな出来事も笑いに拍車をかけてくれます。
トモハル自身の(ある意味)貞操もやばいし……むなしい悲鳴でしたね。
そんな感じでいろいろ笑わせてもらいました。安定しているなあ。
ただ、あまり話は進んでいない気がしますが。
一応、ラストで大きな変化があったから次あたり動くかもしれませんね。
アスラクライン 4 秘密の転校生のヒミツ
第二生徒会が動いているにもかかわらず、被害が続出し、手がかりひとつ掴めない下着ドロ。自分には関係ないと思っていた夏目だが、自分たちのクラスも被害を受けた。それも全員。
怒り心頭した佐伯妹に無理やり引きずり込まれて、夏目たちは下着ドロを追いかける羽目になったが……
題名でもあるアスラクラインというキーワードが出てきたのは初めてじゃないでしょうか。可能性という点では確かにありえることを示唆するという意味でも、結構重要な巻です。
下着ドロを追いかけるドタバタという軽い感じで物語は進むのに、事件の根っこは結構重い。ダークといっても言いぐらい。もしかしたら、自らが選んでしまうかもしれない道が目の前にあるというのは、結構怖いですね。
重々しい雰囲気で書くこともできたでしょうけれど、さらりと読めるように書くところがうまいなあ。
10歳の少女という新たなキャラも登場しましたが、ツンデレというよりは普通に子供だったかな。ちょっと尊大だけど。夜中のトイレの話とかエピソードが微笑ましくてよかった。
それでも、個人的に注目してるのは嵩月さんですけどね。
笑顔を絶やさない嵩月さんの怒りにゾクゾクし、おまじないとイラストでキュンとしてしまう。
このあたりは次作でも大いに期待したいところです。
もちろんストーリィ展開も期待です。次巻では大きな動きがありそうだなあ。
アスラクライン 5 洛高アンダーワールド
困惑したような顔をして嵩月が智春のところへひとりの少女を案内してきた。彼女は先日ちょっとしたことで知り合った、どこか小動物っぽい感じを受ける沙原ひかりという先輩。
「これ、あとで読んでください。お願いします」
とひかり先輩は皆の前で僕に手紙を手渡して……。
今までどこか報われなかった智春に対して、好意を寄せてくる女性ひかり先輩が接近という展開。まあ、この辺はパターンだよね、というような出会いから始まる物語ですが、羨ましさが微妙に感じないのは、苦労が多すぎるからでしょうか。
特に大きな盛り上がりというのがあるわけではないんですが、心くすぐられる思いのぶつけ合いがとても素敵。
そんなひかり先輩が属しているのは、今まで陰に隠れていた第二生徒会。いや、もう生徒会の数が多くて何がなんだかわかりませんが、金に厳しい(汚い)ところみたいです。やることがけち臭いというか姑息ですが、無駄に考えられてます。圧倒的存在感を持つ第二生徒会会長の六夏の自己中っぷりが面白くてしょうがない。
ひかり先輩の可愛さはなかなか良かったんですが、ぼくは嵩月派だからと、平然と構えていたら、最後の最後、ひかり先輩がちょっとお姉さんぶるところでクラってきたのは内緒です。
わりとノリだけで進んでいくお話でしたが、智春の兄の遺産は、ちょっとリアルでした。一瞬ではあるものの「一巡目の世界」を感じる恐怖が伝わってきました。まあ、嵩月からしたら役得?みたいな感じがあるかもしれないけど。
ついに智春が動き出す決意をして幕を閉じる物語。これはちょっと平穏から別の方向に行くかもしれませんね。楽しみです。
そういえば、嵩月さんの出番が少なかったせいか、嵩月さんが主役のおまけ短編が巻末に収録されています。あまりのあまりの可愛さにメロメロになりそうでした。
次回も期待します。大いに。
アスラクライン 6 おしえて生徒会長!
兄、直貴を探し出す決意をした智春だが、家族すら知らない居場所を誰が知っているのだろう。朱浬に尋ねたところ、洛高第三生徒会の会長なら何か知っているかもしれないという。
そういえば未だ会ったことがないが、朱浬すら苦手にしているらしい。不安に思いながら会いに行ってみたら、難問を押し付けられて……
という「おしえて生徒会長!」を含む四編からなる短編集です。基本的に日常的なお話で、「おしえて生徒会長!」は、ちょっと本編に絡むかな、という感じです。程よいコミカルさがいいですね。
呪いの仮面をかぶったら、周囲の者は王様の命令を聞かねばならない「王様遊戯」のあまりのおバカさにニヤニヤ笑いが止まりませんでした。つまりは王様ゲームで、呪いの仮面には、誰も手出しができないという展開にどうするのかと思ったら、ああなるほど、と優しいオチにニンマリ。まあ、関わりあった人からしたら迷惑極まりないけど。ギリギリのギャグには爆笑でした。
智春の幼馴染の杏の悩みごとが描かれた「コンプレックスπ」。まあ、つまりはπの悩みです。パイ、ぱい。おっπ。何とかして早急に胸を大きくしなければならないと、真剣な姿が逆に笑えてしまう。実は操緒もそうなのね。
お人好しな嵩月でしたが、子供のころの写真を見られるのは恥ずかしいのか。ちょっとカワイイ。
ちなみに僕も智春と同じです。胸よりも……。
「おしえて生徒会長!」では、第三生徒会長が、直貴探しを手伝う代償を要求して、というお話。第三生徒会長と科學部部長が初登場ですね。任務自体はいつもどおりのドタバタなんですが、ラストはいい話でしたね。智春からしたら複雑なものがあると思いますが、出会えたのなら悪いものじゃないと思います。
毎回楽しみにしている嵩月の話は今回もありました。体育祭で二人三脚に出ることになった智春と嵩月が、ちょっとした事故から結んだリボンが解けなくなって、という「ウィズ・ユー」です。
いろいろ苦労する智春はおいといて、普段は控えめなのに、こういうときは、ちょっと積極的になる嵩月がいいですね。あのオチを聞いて、嵩月の想いに気づかなかったら、鈍いにもほどがありますが、たぶん、あまり意識しないんだろうなあ。
そんなこんなで、本編の物語は、さほど進んではいませんが、今まで登場した人たちが全員集合して、新キャラも登場して、さらに次以降の伏線っぽいのもあるので、密かにキーとなる一作だったかもしれません。まあ、読まなくても話は通じそうだけど。
個人的には、嵩月が可愛いかったので満足。
アスラクライン 7 凍えて眠れ
二年生が修学旅行に行ったことで、洛芦和高校は、いつもより閑散としていた。そんな中、僕と操緒は第三生徒会会長に呼び出された。恐々といってみると、そこには元第一生徒会会長と、第二生徒会会長まで揃っていて、アスラクラインが狙っている機巧魔神の拡張機能を、僕に保管してほしいとのことだった。何で僕が、と思ったけれど、断れるわけがない。
というわけで、僕は如何わしい大人の玩具みたいな形状をしたプラグインを持ち歩くことになってしまったが……
今まで対立していた生徒会同士が、アスラクラインを相手にすることで協力し合うお話でしたが、それは物語のかなりあとの話で、物語の中盤過ぎぐらいまで、智春と佐伯妹の玲子の話でしたね。これがまた楽しいこと楽しいこと。
玲子を怪我させてしまったということで、智春が学校までの送り迎えなどをすることになるんですが、何かと智春につっかかっていた玲子が、実は智春のことを悪く思ってない様が伝わってくるところが、とてもいいです。今まで着ようとも思わなかった服を、智春が選んだら、嬉々として着るあたり、かわいいですよね。一番好きなのは、お弁当ですけど。
家庭の話や従姉妹である哀音の話などによって、今まで天敵扱いだった佐伯兄妹が、近い存在になっていくところが、とても良かったですが、それだけにラストがあまりにも切ないです。いや、これはもう、このラストを書くためだけに、作り上げられた物語といっても過言じゃないと思いました。
コミカルで、カッコよく派手なアクションがあっても、最後にこういった切なさを持ってきてくれるところが、まさにアスラクラインですね。彼女を思って流される涙が、たまらなく胸にきて、スッと涙が流れました。
心優しき嵩月が、智春を静止しようと強く出てくるのは何なのか、さっぱりでしたが、まさか、機巧魔神にこんな秘密が隠されていたとは思いませんでしたね。さすがに契約ということはないと思うけど、智春としては、今後どの道を選べばいいのか、苦悩することになりそうですね。
今後どういう展開になっていくのかまるでわからなくなってきちゃったなあ。いやあ、楽しみでしょうがないです。
アスラクライン 8 真夏の夜のナイトメア
夏休みに入ったが、特に出かける予定もなく、夏期講習を受ける毎日だった智春は、杏の誘いを受けて、ペンションでバイトをすることになった。何かと嵩月をくっつけようとする友人の樋口に辟易しながら、毎日を過ごしていたとき、逃亡中のアスラクライン・加賀篝を追って、智春のバイト先に宿泊していたアニアが、とある遺跡にたどり着いた加賀篝を発見して……
海辺のペンションでバイトをしていたら、このあたりに加賀篝が潜伏してるかもしれないという情報が入ってきて、さらに学生連盟のGDが現れて……というお話。
初っ端はいつもどいりラブコメ。玲子の気持ちが智春に向かっているかもしれないならば、先に他の人とくっつけてしまえばよいと奮闘する樋口の自分勝手さが、面白い。まあ、あそこまで露骨にやられてしまえば、樋口が何をしようとしているかはわかりますが、おかげで、今までにない意識を嵩月に持つようになって、嵩月の普通の言葉でも、思わず反応してしまう智春の動揺っぷりが楽しいですね。
とまあ、いつもながらのラブコメな始まりでしたが、中盤からは、前作同様重い話だったなあ。前作で知った衝撃的事実が、智春の心に傷を作っていて、動くに動けなくなる様が伝わってきます。これは辛いよなあ。人が傷つくかもしれないけど、助けるために動けば、操緒が傷ついてしまうんですから。こういうのは、引き起こされる人よりも、引き起こす人の方が辛いのかもしれない。
同じようなことは、嵩月にも言えますね。非在化自体、恐ろしいことだと思いますが、その中でも、心にある思いすら実感がわかなくなってしまうんですから、失った場合の空虚さは、並々ならぬものがあると思います。なるほど、こういうところにも世界観の謎が関わってくるんですね。
なんとも不安を煽る終わり方をしてくれましたが、はたして智春はどうするんだろう。義務感として動くのか(朴念仁にして鈍すぎるからありえそうな)、それとも別の道を模索するのか。知ってしまった以上、何からの動きは見せると思うけど、時間がないように思えるので、ドキドキです。
願わくば、智春には、先人たちのような切ない思いをしてほしくないですが……、ああ、どうなるんだろう。今回で出てきた鳳島の妹の契約者についても気になりますし、操緒の姉まで絡んでくるみたいなので、続きが待ち遠しいですね。
アスラクライン 9 KLEIN Re-MIX
暑くて寝苦しい夜。ふと智春が目を覚ましたのは、どこからか、しくしくとすすり泣く声が聞こえてきたからだ。幻聴にしてはあまりにリアルで、恐る恐る出所を探ったら、鳴桜邸を空家だと思って忍び込んできた同級生だった。なんでも、好きな人がいるのに、政略結婚させられそうになって家出してきたのだと言う。悩み相談を朱理さんに持ちかけたところ、いいアイデアがあると彼女は笑って……
身代わりでお見合いしたり、喫茶店で働いたり、ストーカー撃墜のため部長と付き合ったり、佐伯家の別荘へ行ったりと、番外編以外、すべて智春が女装するという連作短編です。
いやあ、楽しい楽しい。バレたら人としておしまいと言う大変な状況の中、始めは人助けのために女装したのに、その後は女装をネタに脅迫されて、困難を押し付けられる様が笑えます。朱理が楽しそうに嫌がらせするんですが、あれだけ女装が似合ったら、無理ないかも。
こういうとき、男にモテるのはお約束だと思うんですが、それがまた楽しい限り。
面白かったのは、女装した智春に対して、いつもと違う一面を見せてくれる人がいるところですね。特に佐伯兄妹。普段のクールさとは別の方面を見せてくれたお兄さんもいいですが、女同士の気安さで、好きな人のことをほのめかしちゃう佐伯妹が可愛かった。誰のこといってるのか、気づいてあげてよ、智春!
最後の短編「メモリー」は、同じように智春が女装する羽目になるんですが、操緒の姉、水無神環緒を探すという本編にリンクしていくお話でした。嵩月の弱点が見えたりして可愛いとかあったけど、あんま進展なかったかな。いや、謎は増やしてくれましたか。
遠い過去にあった未来の話が聞けそう……ってところで続いちゃったので、彼女は何者なのかしらと気になるばかり。次あたり、結構動きそうな感じなので楽しみ。
で、そのあとに番外編「ずっとキミを見ていた」という智春が中学生の頃の淡い恋話が載ってました。智春×樋口をBL妄想する露崎波乃に振り回されて怒りを見せるという、ちょっと珍しい智春の感情が見えてましたが、積極的に出られると頷いちゃうのは、このころから変わらないんだなあ。
いきなりの露崎の行動に微笑ましさを覚えつつ、でも操緒の表情に謎を感じていたら、まさかそういうことだったとは思わなかった。ノートに書かれた言葉が、胸にグッとくる。
でも、最後にはオチをつけてくれちゃうのね。ああ、なんか露崎らしいとか思いつつ、切なさが素敵な読後感に変わりました。
あー、面白かった。最近のアスラクラインは、重い(重過ぎる)お話が多かったので、こういう息抜きがあるとホッとします。欲を言うなれば、もっと嵩月分が欲しかったけど。
ま、それはともかく、次作で誰がどう動いてくるのか楽しみですね。
アスラクライン 10 科學部カイメツ
「やあ、久しぶり……〝二巡目の世界〟の夏目智春。それに操緒と奏か……若いな。二人とも」
『直貴くん……!?』
「なんで、あんたがここにいるんだよ!?」
幼馴染の水無神操緒に取り憑かれた夏目智春が、兄・直貴の残した「イクストラクタ」を手にした事で、世界の真実へと立ち向かうことになるシリーズの第十弾。今回は、操緒の姉・環緒を狙うものが現れて……というお話。
いろいろ見えてきましたねぇ。一巡目、二巡目の話もさることながら、操緒のお姉さんの秘密を知ったときには驚きましたよ。智春のお兄さんである直貴もまた同じような秘密を抱えてて、なるほどなるほどと頷きまくり。
まあ、そこに至るまでが結構長かったですけど。事情を話そうとすると、敵の手が伸びて……という連続には、もどかしさを感じつつ、そのスピーディなアクションに引き込まれました。ほんと面白いな。
今までも、いろいろあったけれど、それでも「日常」からぎりぎり離れることがなかったような気がするんだけど、それが壊れたのはやっぱり、帰るべき家がなくなってしまったからかなあ。そういう意味では、今までと同じようで、でもさらにひとつ重い話だったような気がします。
っていうか、例の人が倒れただけでも愕然としそうだったのに、嵩月の非在化が進むは、操緒の存在がやばくなってくるは、更には、目的を適えるために、他の事をすべて犠牲にした人の真実が見えてくるわの怒涛の後半にやられました。
「どうして同じ過ちを繰り返そうとするのかな……」
という、かの人の言葉は、むしろ智春が言いたいことだったでしょう。あまりにも辛く、切ない出来事でした。ああ……。
多くの謎が明かされたものの、これからいったいどうなってしまうのかと不安に思っていたら、ラストはまさかまさかでしたねぇ。こっち側に行くとは思ってもいませんでした。
始まりの世界で、智春がどう行動していくのか見ものですが、願わくば悲劇を回避してほしいですね。
アスラクライン 11 めぐりあい異世界
「僕のことを知っているのか……?」
少女を見上げて、僕は訊いた。得体の知れない少女の招待に対する恐怖より、好奇心のほうが勝っていた。少女は、今度ははっきりわかるくらいに笑った。
「もちろんだ。あるいは私は、おまえ以上におまえのことを良く知っているかもな。二巡目の世界の夏目智春」
幼馴染の水無神操緒に取り憑かれた夏目智春が、兄・直貴の残した「イクストラクタ」を手にした事で、世界の真実へと立ち向かうことになるシリーズの第十一弾。今回は、戦いに敗れた智春が、一巡目の世界で彷徨うお話です。
面白くなってきたじゃないですか。
序盤から中盤にかけては、一巡目と二巡目の時系列や人間関係のズレに混乱してしまいましたが、繋がりが見えてくると、なるほどと思えるものがあります。
突然飛ばされて不安を抱えていたときに、嵩月と出会えたときの安堵感といったらなかったですが、そこであんな行動まで取るとは、正直、智春を見誤っていました。ちょっと唐突感があったけれど、嵩月はどうするのかと思ったら……、まったく。そこで遠慮しちゃうから、ダメなんですよといいつつ、そこがらしいとも言える。
一巡目で一番驚いたのが、智春の彼女と呼ばれる魔女がいるって話を聞かされたときですね。智春自身、いったい誰だと疑問に思ってましたが、読んでる僕も誰なんだろうと頭の中にはてなを浮かべながら読んでましたが、ああ、そうか!とポンと膝を打ちました。すっかり騙されたけど、たしかに彼女しかいないよなあ。
魔女と呼ばれるまでの時間を思うと、涙を誘われますが、ここで二巡目の智春と出会えて、本当に良かったねと言いたくなるものがあります。
嵩月の体に起きた変化や操緒が出てこないことから、機巧魔神の秘密が見えてきましたが……まだよくわからないなあ。鍵を握るのは、操緒ってことですか。どうやら次作が一巡目世界の後編になるらしいので、そこでさらに見えてくるものがあるでしょうね。今回と違って派手になるそうなので(今回の雰囲気も好きだけど)、とても楽しみです。
アスラクライン 12 世界崩壊カウントダウン
「それで、きみはなにをすればいいのかな、トモハル?」
「それは……」
突然の彼女の質問に、僕はハッと顔を上げた。
「彼らはきみになにを期待していたの?嘆き悲しむこと?それとも彼らの仇を取ること?」
幼馴染の水無神操緒に取り憑かれた夏目智春が、兄・直貴の残した「イクストラクタ」を手にした事で、世界の真実へと立ち向かうことになるシリーズの第十二弾。今回は、非在化が進む一巡目の世界で、智春が世界の秘密に触れるお話です。
アニアや嵩月がいろいろ気分を盛り上げてくれるんですが、何ともやりきれない思いになるのは、「あちら」とは違うことをまざまざと見せつけられるからだろうなあ。智春の思いが辛く感じますが、同時にここでの出会いが謎解きのキーとなるから、油断できません。
悪魔の雌型と雄型の違いやら何やらと、今までの伏線を回収しまくって、ああ、なるほど、こういう繋がりをしてくるのかという展開が面白かったです。
ただ、智春に背負わされたものってのがすごい大きいですよね。究極の選択よろしくな状態ですが、泣き言を言いながらも、考えに考えて、ちょっとだけ成長した姿が見えたように思えます。
最後はわかっていても辛いものがありましたが……これって二巡目に戻ったら、もしかしてくれないかしら、という淡い希望を持ってるんですが、どうなんでしょう。続きが気になります。
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