108年目の初恋。 / 末永外徒 ― booklines.net
108年目の初恋。
「旧校舎」となった私の前に、久しぶりに見物する生徒が現れた。新入生の新くんだ。どうやら「旧校舎」は立ち入り禁止と言われて興味を惹かれたらしい。退屈していた私は、久しぶりに生徒を見ることができて嬉しくなってしまった。
怪異を起こして人を驚かすようなことはしないと誓った私は、そっと見守っているだけで良かったが、ある日、新くんが無茶なことをしたので、思わず声をかけてしまい……
ああ、素晴らしい。まさに「108年目の初恋」ですね。好奇心旺盛な少年の新と「旧校舎」であるコウの素敵な素敵な恋物語です。
人とは関わらない決断をしていたコウが、新を見守っているうちに、気になる存在になって、いつしか惹かれていくという気持ちの変化が、とても素敵ですね。
人を好きになる気持ちというのを、ここまでセキララに語ってくれるとは思いませんでした。ふたりで回った校舎内のシーンとかいいですよね。壁に残された交換日記のエピソードなど、些細なことだけど、秘密を共有できる人がいる嬉しさが伝わってきます。
ノスタルジックで切なくて、恥ずかしく思いながらも、こっそり胸にしまっておきたい。そんな気持ちでいっぱい。
好きだからこそ、自分たちの間にある壁を強烈に感じて、葛藤するコウの姿には切なくなりますが、葛藤から閉じこもってしまったコウを引っ張りだして、約束を守るために走り回る新を見て、これはコウだけじゃなくて、新の成長物語でもあったんだなと思いました。
無理と思って進めないコウの背中を一押しする行動に、ふたりだけの信頼を感じて、もうやってられないよ。ああ、うらやましい。
そんな二人の様子は、いつまでも見ていたい気がしましたが、個人的に印象的だったのは、新に惹かれていたクラスメイトの夕子の言葉でした。本人が幸せならと思いがちですが、そうですよね、思ってくれる人がいることを忘れちゃダメですよね。
彼女としては、いろいろ複雑だったと思いますが、あの一喝は素敵でした。こういう子は、ほんと応援したくなります。素敵な恋を見つけて欲しいな。
最後の最後までやってくれちゃって、ほんと素敵な物語でした。こうなると、次にどんな物語を紡いでくれるのか、楽しみになってきますね。
第8回えんため大賞優秀賞受賞作。
108年目の初恋。2
待ちに待った初デート。といっても、場所はいつものように私の中だけど。ただ、期待と違って、ちっとも盛り上がらない。沈黙が訪れるとすっごい焦ってしまうし、ついつい要らぬことを言って、新くんを怒らせてしまった。そこへ訪れたのは、珊瑚細工の付喪神のサンゴさん。保護者代理としてきてくれたのはいいんだけど、色っぽいし、エッチだし、新くんを誘惑するし……
「旧校舎」であるコウの恋物語の第二弾。ハッピーエンドで終わったあとだけに、どう続けるのかと思いましたが、始めての恋に悩む女の子のお話でしたね。友人とだと普通に楽しく話せるのに、好きな人といると楽しく笑えないって、何かわかるなあ。新を思う気持ちはあるのに、頑張ろうって気持ちが強くなっちゃうと、空回りしちゃうんですよね。
そんなコウを見て、一緒に悩んだり、叱咤激励してくれる夕子やいすずなどのやり取りがまた良くて。ありふれた感じではあるんですが、友達っていいなと思いました。
それにしても、コウの妄想は楽しかった。次こそは楽しいデートにしようとして、デートシミュレーションをするところがあるんですが、誰もが考えてしまいそうな自分に都合のいいベタベタな妄想に、ニヤニヤです。新のために頑張る姿は、ほんと可愛かったなあ。
ただ、その頑張りが空回りして、いろいろ燻っていたものが、とあるきっかけから大きな喧嘩に発展して、というところは、恋愛ものの王道っぽくてよい感じ。意地を張ってどうしても謝れないところとか、不安が不安を呼んで別れることになったらどうしようとか悩むところは、本気で不安のサイクルに陥っていく様が見れましたね。
新任教師である付喪神のサンゴが、またいい味出してましたね。人間は嫌いといいながら、何かと邪魔しているようで、結果として二人の仲を深めていくところには、思わず拍手したくなります。「偶然」を強調していたけれど、きっと……と思ってしまう僕は甘いかしら。
始めての喧嘩と始めての仲直りと。
小さなことで一喜一憂するふたりを見てると、幸せってこういうものの積み重ねなんだと納得しちゃいますね。二人だけの問題と思われがちだけど、周りの人にもいろいろ助けられるし、逆に周りの人へ幸せをお裾分けすることもあるし。恋って、みんながいるからこそ、できるし、育っていくんだなあと思いました。いやあ、いー話です。
ただ、話としては同じようなところをぐるぐる回るというか、微妙に盛り上がるところがなくて、ちょっと退屈だったかなあ。短編とはいわないけど、中編ぐらいだったら、もっと良かったかも。
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