氷姫イザモルドの呪いによって、大地は次第に凍っていた。呪いをとくために、東から来たという鋭い目をしたシリエンは、アストラに氷姫のところまでの道案内を依頼してきた。ただのうたびとでありながら、氷姫の魔法の庭に、奇跡的に足を踏み入れたうたびとのアストラに。
彼の竪琴の響きに胸を打たれ、うたいたいという思いが、再び心を駆け巡ったアストラは、北方の音楽を知るために、シリエンと共に氷姫の魔法の庭を目指すことにして……
妖魔の王シリエンと、うたびとのアストラが、氷姫イザモルドを探す旅に出て……という、名前とうたが重要な意味を持つ世界のお話ですが、何といっても、はじまりがいいですよね。
生まれ育った南方では、禁忌とされていた北方のうたに惹かれて、そのために追われることになってしまったアストラが、うたいたいという思いを胸にするところが、とても良かったです。この気持ちを引き出したシリエンの言葉と、奏でる竪琴の音色も素敵でした。雰囲気が絶品。
アストラの音楽に対する興味と好奇心と真摯な態度は、個人的にいいなあと思って読んでましたが、人としても優しいところが随所に感じられましたね。サーライのエイーシャのときは、たぶん、シリエンだけだったら、こじれにこじれたんじゃないかなと思ったり。
このサーライでの話は、非常に音楽的で、読んでるうちに、周囲の音がすべて消えて、物語の中で奏でられてる音が聞こえてくる感じがしました。ああ、もう、この唄が聞きたい、この音楽を聴きたいと、切実に思いましたね。
尊大で傲慢な態度がとても似合ってるシリエンでしたが、アストラと行動しているうちに、何ていうか、親しみ易くなってきてますよね。何があるってわけではないのに、二人の会話が面白い。物怖じしないアストラが、シリエンの態度にむかつきながらも、心の内では憧れているところもあるという関係が素敵でした。
謎な存在であるシリエンの昔のことなどが少しだけ描かれてていましたが、どれほど昔の話なんだろう。雰囲気的には、人というよりは神の領域な感じですが、気になるところですね。
全三巻とのことなので、続きがとても楽しみです。
妹尾さんは大好きな作家さんなんですが(と言えるほど、多くの作品を読んだわけではないですが)、絶版のため、この作品はなかなか手に入らなかったんです。でも、リッパーさんが貸してくれたおかげで、読むことができました。ありがとうございます。
魔法の庭〈1〉風人の唄
妹尾 ゆふ子
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