休戦協定が結ばれてから、南アルテースは大いに賑わっていた。もともと高い技術を持っていただけあって、メイベルのちょっとしたアイデアから、次々と新たなものが生み出されていったのだ。だが、そんな平和な時間もつかの間、西アルテース軍が、南アルテースへと進行し始めてきて、しかもそれが連合憲章にぎりぎり違反しないところをついてきているのだ。これを切り抜けるには、南アルテースをひとつにまとめるしかない、ということで、ソルティス教の聖女でありとドラゴン教の聖者でもあるメイベルを大統領にしようという動きが生まれて……
くじびきで選ばれた聖女メイベルと勇者ナバルの冒険を描いたシリーズの第六弾。今回は、休戦協定が結ばれた南アルテースでの技術革新と、西アルテース陰謀が迷い込んでくるお話です。
いやあ、面白かったなあ。目新しいものを見つけると、すぐに興味を持ち、どんどん吸収し、新たなアイデアを生み出していくメイベルの生き生きとした姿が、素敵ですね。思わず、置いてけぼり感を食らってしまうナバルの気持ちもわかる気がします。ま、ナバルはナバルで、資金の運用というところで、活躍してたりするんですが。
本人たちの努力とあいまって、いつの間にやら、その国・地域に、なくてはならない存在になるあたりが、さすが勇者・聖女ですね。
それにしても、メイベルがナバルに思いっきりラブラブ光線を仕掛けてるあたりが楽しいなあ。見つめられたらポッとなって、どさくさにまぎれて結婚話を持ちかけて、抱きかかえられたらピンチの場でもふにゃふにゃになってと、恋する乙女の視線が可愛い。特に、帝都に戻れるかもしれないという話が持ち上がってきたとき、ナバルに護衛を持ちかけるところなんてもう!あれじゃ、南アルテースから離れようって気になれないだろうなあとニヤニヤ。
その南アルテースでの技術革新の速度がすごかった。ひとつのアイデアが、思いもよらなかった道を生み出していく勢いが気持ちいい。相変わらず薀蓄多いですが、わかるところだけを繋いでいくだけで、あー、なるほどと思える。
だが、逆に思いもよらなかったことを生み出していく過程で、兵器としての力も大きくなっていくあたりは、心痛むものがありますね。
その間に、西アルテースが侵略してくるんですが、政治的理由から、帝都や南アルテースが動けないというのが、なんとももどかしい。ただ助けたいだけじゃ動けないってのは、仕方ないところではあるけれど、打開策が傑作でした。聖女を大統領とはナイスアイデア。
尻込みしていたメイベルが、引き受ける決意を固めたのは、戦争の悲劇を目の当たりにしたからですが、やっぱり、ああいった出来事を繰り返してはいけませんよね。ぐじゃぐじゃになっていたメイベルに対して、思わずとったナバルの行動に、きゃーと思いましたが、凛とした佇まいを見せるメイベルに更なる成長を感じて、格好いいと思いました。
そして、何より素晴らしかったのは最後のシーン。望まれて壇上に立つメイベルの言葉が、周囲の人たちの視線が、とても素敵で、あー、これ、ここでお話は終わりだなと、そう思えるほどでした。まさか続くとは思わなかったけど、ま、陰謀はまだ終わってないって事ですね。
可能であれば、悲劇が繰り返されないことを望みたいですが、よりによってアレが敵の手に渡ってしまったことだし、どうなって行くのか気になりますね。
くじびき勇者さま 6番札 誰が初代大統領よ!?
清水 文化
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