西周ミオ。才色兼備という言葉がぴったりな彼女は、しかし孤独な香りがしていた。彼女自身壁を作っていたこともあるし、何より左手に巻かれている血の滲んだ包帯が近づき難い雰囲気を作り上げていた。始めて見たときから、彼女に惹かれていた僕は、彼女に声を掛け、付き合うことになった。ただ隣り合って本を読むだけのような付き合い方だったけど、それでも悪くないと思っていた。彼女が通り魔に襲われるまでは……
自身の存在を確かめるためにリストカットする少女ミオと、自分の心と行動が一致しないと悩むカズヤが出会って、というお話。会話のセンテンスというか文章のリズムが個人的に好み。
付き合うといっても、ただ側にいるだけの関係だったふたりでしたが、ミオとの距離が近づいた瞬間のやり取りは、ホント良かったです。ぬいぐるみの例えは、キザでしたが、心のこもった言葉でしたね。かっこよすぎる。
初デートの緊張感とか、付き合っていくうちに、角が取れていくのが感じられるところは、素敵な恋愛ものでした。
ミオがリストカットを始めた理由については、なかなか触れられなかったんですが、根本から関係してくるとは思いませんでした。これは……重過ぎる。自分のことすら客観視できるカズヤが混乱する様が、よくわかります。本当の意味での自分の気持ちに気づいてしまったことが、より拍車を掛けたのかもしれません。
混乱のままに動いていたカズヤが、自暴自棄じゃないですが、ミオに対して動いたさまには、どちらの心情もわかるだけに胸が痛くなる思いがしましたが、カズヤの混乱を解きほぐし、どうしたいかと説いた沙姫部先輩が素敵でした。僕だったら、間違いなく先輩に惚れますね。
ミオと同胞の人の行動については、何か安っぽいものを感じてしまったりして、微妙な思いでしたが、葛藤や苦しみをとかを乗り越えて、支えあう人を確かめ合うラストは良かったです。前半があまりにも良かったので、後半ちょっと弱く感じましたが、素敵なボーイミーツガールものでしたね。好きだなあ、こういうの。
この二人の関係からすると、続きはないと思いますが、「Case of Mio」ってことは他のCaseもあるのかしら。個人的には先輩の話を読んでみたいので、あってくれたら嬉しいです。
第1回ノベルジャパン大賞佳作受賞作。
カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1) (HJ文庫 は 1-1-1)
翅田 大介
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