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[河上朔] wonder wonderful 上

「……お姉ちゃん、どうしよう、熱、全然下がらないんだよ……」
ひなたの感情が伝わってきた。
こわい。
何度ここに来ていたって、ここはひなたの住み慣れた世界じゃない。
小さく差し出された手をぎゅっと握ると、ひながた泣きそうな顔で私を見た。小さい頃から変わらない。泣くのをこらえるときに、下唇をぐっと噛む癖。たまらず、私は言った。
「待ってな、ひなた。私そっち行くから。いい?あったかくして、おとなしく待ってるんだよ?絶対すぐ行くから!」

王太子と冒険を繰り広げてきたという妹ひなたの異世界旅行。どこか他人事気分で話を聞いていたら、妹に危機を夢で知り、姉として駆けつけなければという思いから、こかげは異世界の国ディーカルアへと足を踏み入れて……というお話。

これは最高に面白い!
therehereで公開されていたWeb小説を書籍化したもので、僕自身、一度Webで読んでるんですが、にもかかわらず、読み始めたら止まらなかったです。

妹であるひなたを大切に思うという気持ちは、こかげも国王たちも同じなのに、なぜかこかげに対しては、彼らの視線は決して歓迎するものではないことから、すれ違いを見せ付けられるんですが、理不尽さを感情だけで反応せず、状況を判断して、自分の気持ちのみならず相手の気持ちも考えて、自分はどう動けばいいのかを考えながら行動していくところに、こかげの魅力があると思います。あの「試されたとき」の反応は、立派だと思いました。

それでも、やはり息苦しいことはあって、思い悩んでいたときに、王宮の「外」の人たちに出会えたのは、こかげにとって本当に良かったよなあ。「呑気亭」のおかみさん・ハンナとの出会いがなかったら、この世界をきっと嫌いになったまま、離れていっただろうから。

たくさんの町の人と出会って、たくさんの子供たちと出会って。
人の優しさと温かさがこんなにも伝わってくるお話ってないよなあ。
「中」から見た城の様子と、「外」から見た城の様子から、もう一度、妹が信じた城の人たちを信じたいと思って調べるところに、こかげの人の良さが見えますね。

ただ、平和な時間というのはそう長くは続かず、国王の思い人の姉であるという存在が、他の者から狙われることになり……。そして気づけば、自分のせいで妹を危機に追いやる羽目になって。
隠されていた王家の事情やら何やらで、国王ザキくんの心の闇も広がっていく中、ふっきったこかげが、お姉ちゃんっぷりを発揮して、妹を助けるべく策を考え始めてからの展開は、ほんと面白い。

異世界で自分の居場所を見つけていくところもさることながら、恋愛要素も見逃せませんよね。はじめは嫌悪していた近衛隊の隊長・ルナカートとの間に、憎まれ口をたたきあいながら、だんだんと近しいものになっていくあたりは、ニヤニヤがとまりません。特にルナカートが何か言おうとすると、いいタイミングでスルーするあたり素晴らしき天然ぷりだぜ、こかげ。このあたりの恋の行方も楽しみでなりませんね。

そして、さあ、妹を助けるべく「魔性の女」作戦を思いついた、というところで上巻は終わり。
下巻はあそこから始まるのかーとニヤニヤしながら、すぐさま読み始める自分がいました。
超オススメ!!

ちなみに上巻には、番外編として書き下ろしの短編「彼女の護衛たち」が収録されています。こかげが異世界へやってきたとき、彼女の護衛兼監視役として配属されたラッシュ、シーリー、ヨーサムの三人の心の内が描かれています。ああ、あのときこんな感じで、こかげの側にいたんだ、と思うとニヤニヤですね。

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