そろそろ文化祭の演目を決めないとと思い、部員を集めてミーティングを開いた。僕としては裏方に回りたかったけど、一年生が五人しかいない演劇部では、それを許してもらえそうにない。問題は、この人数で何を演じるかだ。と、そのとき、突如、棚が倒れてくるという事故が起こり、その拍子に棚から一冊の台本が飛び出してきた。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を、登場人物五人で演じるよう脚色された台本が。
倒れてきた棚、おあつらえ向きの台本。不安を覚えながら決めた配役で、まさかあんな騒動が起こるなんて……
演劇部にあった「ロミオとジュリエット」の台本の呪いによって、学園一の美少女・"マキューシオ"役の雛田、キツイ感じの美女・"ティボルド"役の村上、おとなしく可愛い・"ジュリエット"役の新堂、美形だけど男・"ロレンス"役の西園寺が、"ロミオ"役の如月に好意を抱いてしまって、というところから始まる、ちょっとコミカルで、ちょっと切なくて、最後は優しい気持ちになれる恋愛物語です。
これはいいなあ。
表紙をめくって、一枚目のイラストにドキッとさせられて、何ともいえない不気味さを感じます。結構ラブコメな雰囲気もあるんだけど、随所に不安を覚えさせる描写があるので、緊張感が抜けません。
「遠くへ行かないで。あなたを、いたずらっ子に飼われている小鳥のようにしてしまいたい。ちょっと手を離しても、すぐに絹の糸で引っ張り戻してしまうの。愛しているから飛んでいってほしくないのよ。ああでも、可愛がりすぎて殺してしまうかもしれない」
舞台で演じるジュリエットの台詞が、また不吉なことこの上ない。それでも、必要以上に暗くなることなかったので、良かったです。
切ないのは、呪いにかかったうちの一人が、如月の好きな人だってところですね。相手の好意は、まやかしだとわかっている。それでも嬉しく思う気持ちもあり、フェアじゃないという気持ちもありと、ちょっと心が痛い。
いや、それよりも、もともと如月のことを好きな子が、呪いにかかってしまったことのほうが切ないか。本物の気持ちと、強制的な気持ち、それも他の女の子へのドロドロした気持ちに悩まされながら、ひとつの劇を成功させるために、共にすごすって、どれだけ苦しかったんだろうと思うものがあります。
好きという気持ちはきれいごとだけじゃないけれど、そんな感情にショックを受けながら、でも呪いに負けまいと立ち向かっていった部員たちの姿がとてもよかった。舞台の上でのトラブルを切り抜けることができたのは、みんなの力があったからだと、そう思いました。
ああ、やっぱり、この人の物語っていいよなあ。
ラストがまた素敵なんだ。
イラストと相まって思う。青春って素晴らしい!
ロミオの災難 (電撃文庫)
来楽 零
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