秋も深まってきたその日は、私たちが通う学園の文化祭初日だった。いつものメンバーと共に、どうやって各クラスや部活の出し物を回っていくか考えていたとき、不意にひめひめが、二年三組に行ってみようと、意味ありげな笑みを浮かべ始めた。彼氏のクラスに行くよとからかわれながら、私たちはマスターのクラスが開催している「TS喫茶」へと足を踏み入れたが……
シリーズ後の文化祭の合間に、「ナンパ×休日×ショッピング」「ナース・アタック」「湯当たりクライシス」「ありがと、ばいばい」という四編の短編と、BONUS TRACKとして「レジンキャスト病棟 ~最後の一葉~」と「喫茶」が収録されています。
文化祭というにぎやかな空気を楽しむ姿が見える中、舞鶴の様子がこうも変わったことが意外でした。まあ、今までの彼女の原動力が怒りであったことを考えれば、わからなくもないですが、「虚軸」を失ったことも、戸惑う原因のひとつだったみたいですね。いなくなった人たちのこともあって、変わってしまったことには、切なさがあったり。
で、短編。「ナンパ×休日×ショッピング」は、まだ硝子が高校に入る直前のお話で、ある休日に、晶と硝子と芹菜が買い物へ出かけ、同じ時間に塚原がナンパしにいってるお話。塚原側の話が面白かったなあ。気づかぬうちに、自分の学校の先輩や同級生をナンパしちゃうなんて、どんな天然さんなんだと思うけど、ま、そのおかげで、ガールフレンドができたのは良かったんじゃないでしょうか。……尻に敷かれたとしても。
晶側の話はわりとどうでも良かったんだけど、最後に芹菜が自分の秘めた思いを確認するところが印象的でした。叶わないとわかっていても、応援したくなるものがあるんですよねぇ。
「ナース・アタック」は、高校の保健室が舞台。とても楽しそうなのに、微妙にかみ合わない会話のなんと絶妙なことかとニタニタしてしまった、里緒とネアのやり取りですが、そんな里緒が、ネアの手伝いをしようと決意するお話。悪意の欠片などまるでないだけに、里緒の勘違い治療と笑顔が怖い。さすがの殊子さんも、怯えるわなあ。
蜜を巻き込んだところで、自分の過ちに気づき、落ち込んだところは可哀想になりましたが、さらっとうまくまとめてくれる晶が、格好いいですね、ちくしょー。
蜜が里緒を微妙に苦手にしてたのは、こういうエピソードがあったからかと思った次第。
「湯当たりクライシス」は、晶と硝子が商店街のクジで当たった温泉旅行に出かけたら、殊子や君子が家族と共に来ていて、というお話。直接見るのではなく、覗くからこそ興奮するのだと公言する、殊子の変態パワーが炸裂していましたが、君子を守るために、蜜が奮闘する姿が光ります。っていうか、お前ら、何やってるんだとツッコミたくなりますが、まあ、最後はほのぼのして良かったかな。
「ありがと、ばいばい」は、プロローグと各短編の間で見せてた文化祭のお話の締めを飾る物語。これが一番良かった。あの出来事のせいで、どこか止まっていた感のあった蜜のために、一歩前へと進ませようとするネアの言葉が、素敵でした。ほんの些細なエピソードにグッときちゃうのは、本編を読んでるからなんだろうなあ。この短編の扉のマンガがまた、とても温かくて、それだけに泣けるんだ。
タイトルどおりの「ありがと、ばいばい」は、読者である僕から作者さんへ告げたい言葉でもありました。
ちょっと物足りないなあと思うんですが、本編を読んだ人なら面白いんじゃないかな。個人的には裏表紙のイラストがすっごい好き。
あとがきによると、次なる新シリーズは、ファンタジーものになるとか。どんなお話を届けてくれるのか楽しみですね。
れじみる。Junk
藤原 祐
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