バレンタインデーの翌日。気になる子からチョコをもらえず、ふてくされていた俺が歩いているとき、「トキ」という上ずった声と同時に、肩をつかまれた。今にも泣き出しそうな表情を浮かべて、俺の顔を見つめていたのは、「渋谷の月待ち女」として噂になっていた女性だった。きれいな人だけど、月が満ちるたびに、ハチ公前で恋人を待ち続けるなんて、ちょっとおかしいんじゃないかと思いつつ、俺はそれから、ハチ公前を通るたびに彼女の姿を探すようになって……
優しくも気が弱い少年・新谷が、満月の日に、ハチ公前で亡くした恋人を待ち続けていると噂されている女性イズミに恋する「つきこい 続・月下少年」と、イズミがハチ公前で恋人を待ち続けるきっかけとなった出来事を描いた「月下少年」という二編と、間を埋めるショートストーリィからなる物語集です。
はじめのお話は、なんか痛々しいものがあって、微妙だったなあ。いや、イズミに惚れる過程がちょっとわかりにくかったんですよね。気になる人とか憧れの人にはなると思うんですが、それ以上の感情になるところが、ちょいと物足りなかったです。ひょっとしたら、彼女のような彼女じゃないような距離にいるミヤコを素敵に思ったからかもしれないけど。気まぐれかもしれないけれど、本音を見せたときの彼女はよかったなあ。新谷が怪我をしたとき、彼女がギブスに何と書いたかが気になります。
とまあ、ちょっとしっくりこなかったんだけど、幕間というか後日談的なお話の「モーニング・ムーン」を読んだら、すっきりしたかも。
恋愛という感情に目をくらませて、大きなものを失ってしまった彼女が、再び、手を取り合いたいと思える人が現れたのは、良かったなあ。キスひとつで、こんなにドキドキさせられるとは思いませんでしたよ。
それだけに、最後は切ないですが……これが「つきこい」に繋がると思えば、ハッピーエンドといってもいいかもしれませんね。っていうか、個人的には、時系列どおりに並べたほうがいいんじゃないかと思いましたが……。ぼくだけかしら。
結構好きな雰囲気の作品なので、ちょっと他の作品にも手を伸ばしたくなりますね。
つきこい
山科 千晶
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