Home > ライトノベル > [三木遊泳] カレイドスコープのむこうがわ 2

[三木遊泳] カレイドスコープのむこうがわ 2

「それで志帆、杉谷君のことどうするの?」
頭が良くて、顔も良くて、さわやかなスポーツマンである杉谷君に告白されたことを知った友人のリサは言う。どうするもこうするも、あたしには神田君がいるのだが、よく考えるまでもなく、あたしと神田君は付き合っているという間柄までいってない。友人以上ではあるが、それより踏み込む勇気が出ないのだ。杉谷君への返事をうやむやにしたまま、自己嫌悪に陥っていたとき、突然神田君から電話があって……

異形を周囲に知覚させるという「同調者」としての力があったことで、祓い師の仕事を手伝うことになった神田道弘の日常と非日常を描いたお話の第二弾。

亡くなった妻の思いを叶えたい老人に付き添う「相思の花」、写真に込められ、捕らわれたた思いを描く「往く春」、他の人に告白されたことで、神田君との関係を見つめなおす井上さんを描いた「巡る秋」、井上さんへの迷いから危険に晒される道弘の「波の下の鳥」、ついに井上さんに言葉を告げようとしたときに大きなトラブルが入った「残されたもの」という、前作同様、五編からなる短編集です。

死ぬときに、こういう関係を築けた相手がいてくれたら、ほんと幸せなんだろうなあと思える「相思の花」や祓うことの辛さと、それを乗り越えていく強さを感じさえる「往く春」は、オーソドックスながら、良い話ですね、としみじみ思う。

そんないい話を絡めつつ、井上さんのことを意識しつつ、でもそれ以上の可能性について、考えないニブチンな神田くんと、いいお友達以上の関係に進みたいと思いながら、もし今の関係が壊れてしまったらと思うと踏み出せない井上さんの関係を描いてくれて、これがまた青春ものとして、素晴らしかったですね。

特に、神田君が同調者の件で、辛い思いを抱える羽目になったときの井上さんは素敵でした。話せないことがある神田君の思いを察して、余計なことを尋ねず、かといって離れすぎることない距離を保ってくれたことは、神田君にとって、どれほど心強く、どれほど温かく思ったことでしょう。きっと、このことがあったからこそ、同調者のことを話そうと思ったんじゃないかなあ。
このときのやり取りを、神田君、井上さんのそれぞれの視点から見れたのは、とても良かったです。

それだけに、最後の話は切なさいっぱいで。
決意を胸にした神田君の行動が、ほんのわずかなすれ違いで、残酷な結果を導く羽目になったというのは、なまじ同調できてしまうからこそ、辛いなんていう言葉では現せないと思います。それでも、決して流されず、言葉を伝えることができたのは、同じように辛い思いをしているであろう井上さんの言葉があったからなんだろうなあ。

あのあと、井上さんと会ったときの神田君の気持ちは、ほんと辛いです。わかっていても、それでも一縷の望みを持っていたであろうに。だからこそ、最後に手を取り合うことになったときの思いには、涙を隠せませんでした。今度は、神田君、君が彼女を……ね。

いやあ、良かったです。最後のシーンがとても素敵でした。あー、もう、この人のお話大好きだ!これで終わりというのは、非常に残念でもありますが、これ以上続けたら、蛇足よなあという思いもあるので、きっと、ここで終わるのが一番きれいなんだろうなと思うことにします。
次のシリーズも期待大ですね。

カレイドスコープのむこうがわ 2 (2) (電撃文庫 み 11-2) - 三木 遊泳

カレイドスコープのむこうがわ 2 (2) (電撃文庫 み 11-2)
三木 遊泳

メディアワークス(文庫)
Amazon | bk1


関連エントリー
[三木遊泳] [カレイドスコープのむこうがわ感想一覧] [電撃文庫] [ライトノベル]

Home > ライトノベル > [三木遊泳] カレイドスコープのむこうがわ 2

Trackback:3

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/1924
Listed below are links to weblogs that reference
[三木遊泳] カレイドスコープのむこうがわ 2 from booklines.net
カレイドスコープのむこうがわ〈2〉 from MOMENTS 2007-09-27 (木) 21:33
井上さんの恋の行方は……? シリーズ完結 思い切ったラストです 祓い師の手伝いを続ける道弘の日常は二足のわらじ。タイミングの悪いことに仕事と、微妙な...
良い意味で中途半端【カレイドスコープのむこうがわ1・2】 from ラノベなPSP 2007-10-07 (日) 23:41
[ カレイドスコープのむこうがわ1] [ カレイドスコープのむこうがわ2] 今まで短編小説の文庫は今一つ内容が薄かったりであんまり好んで買ってなか...
(書評)カレイドスコープのむこうがわ2 from たこの感想文 2007-12-13 (木) 11:29
著者:三木遊泳 カレイドスコープのむこうがわ 2 (2) (電撃文庫 み 11-

Comment:0

Comment Form
Remember personal info

Home > ライトノベル > [三木遊泳] カレイドスコープのむこうがわ 2

Search
お気に入り

異形の王子と毒を吐く少女の恋の物語

4048700588

他人を寄せつけぬ毒を載せた言葉を吐いていた少女が、王子と伝承と出会ったことで、信じる思いを紡ぐようになる、その祈るような思いに涙しました。懐かしき人たちとの再会もまた素敵。→感想


それは血の繋がらない家族の物語。

4048700480

大きな山や谷があるようなお話しではないんだけれど、クセのある七人のきょうだいが共に暮らすその家には、じんわり温かい家庭がありました。それぞれ抱えているものはあるけれど、この家族ならきっと支え合いながら乗り越えてくれると信じてる→感想


それは「夢利き」が語る人の夢の物語。

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶 多崎礼

最高傑作級!辛くとも好きな人と共に歩める幸せ、あるいは人の夢に乗る幸せと切なさ。独立しながら、リンクする物語は、温かさに、人を想う気持ちに満ちあふれて、胸が熱くなる。人が人と出会うことの素晴らしさは、時に眩しくもあり、切なくもなるんだなと思いました。→感想


江戸時代。新たな暦を作る偉業を成し遂げた渋川春海の物語。

天地明察

最高傑作!碁打ちであり、算術家でもある男が、打ちのめされ挫折して挫折して挫折して、でも夢を忘れられず、立ち向かう姿に、どれほど興奮させられたか、泣かされたことか!さりげなく描かれる恋も素晴らしく、読み終わりたくないとこれほど思った作品はありません。 → 感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下

なかのひと

Page Top