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世界平和は一家団欒のあとに(3) 父、帰る / 橋本和也

元「勇者」でありながら、今では経営コンサルタントとして、普通の仕事をしている父さんが、帰ってくるらしい。浮かれる母さんのおかげで、買い物に行かされた俺と妹の美智乃が、大荷物を持つことになった帰り道。清楚なお嬢様といった女性に声をかけられた。俺たちに声をかけるとは、まさかと思っていたら、彼女は母や父の名を出して、さらに錫杖を取り出して襲い掛かってきて……

家族全員正義の味方である星弓家のお話第三弾。今回は、長男・軋人の淡い初恋と、前作と違った形での父と家族の関係を描いた、切なさとそれ以上に温かさ溢れるお話でした。

元勇者であった父が帰ってきたタイミングで、異世界のお姫様だった母の友人エリカが、魔方陣の暴走でこちらの世界へやってきたんですが、初っ端のコミカルなやり取りが楽しいですね。
さらに、初登場の父が、ええ格好しいが似合う女たらしってことで、笑いに油を注いでくれるんですが、騒がしい中、感じられる団欒が、とてもよかったです。

そんな和やかな空気の中、チラチラと怪しい空気を見せるエリカでしたが、それでも、疑う気持ちをもてなかったのは、遊園地でのやり取りがあったからかな。後から考えると、冗談の中に本気が紛れ込んでいたことがわかりますが、この時点でも「何か」を感じさせるものがありました。この微妙な雰囲気の伝え方に惚れ惚れです。

まあ、惚れ惚れという点では、軋人と共にお化け屋敷に入った柚島さんの脅えっぷりのほうが素敵でしたけど。気遣う様子を見せた軋人の言葉に、脅えながらも、ドキドキする柚島さんが良かった。

腹の黒さとは裏腹に、エリカのあけすけな態度に、心惹かれていく姿は、柚島さん好きな僕としては、うーんと思ってしまいますが、鈍い軋人からすると、このくらい直接的な人のほうがアピール力があるんだろうなあ。
エリカがなぜこの地に来たかという本当の理由を知ったときに、助けたいと思ったのは、大切さを感じた人が困っていたからという気持ちが伝わってきました。

つらい事実を前に、力を尽くしたいと思った軋人の気持ちもわかりますが、それ以上に心打たれたのは、父の気持ちですね。
家族というかけがえのない宝物。
それを守るためなら、幸せを守るためなら、時に心を鬼にすることも辞さない覚悟に痺れました。情けなく思えることもあったけれど、やはり父は偉大です。

子供たちのような特殊能力はなくとも、ひたすらに強い父を相手にして、倒されても倒されても立ち上がる軋人の姿には、涙を誘われるものがありましたが、それ以上にキタのは、指輪に込められた思いですね。
流せない涙ほど辛いものは無いと思いました。

父の思い、軋人の思い、エリカの思い。それぞれが優しさを見せてくれたわけですが、それでも、今回一番の優しさを見せてくれたのは、柚島さんだと思いました。きっと、軋人の気持ちは、薄々感じていただろうに、それでも、好きになった男のために、慰めではなく、ただ見守ってあげた姿に、堪えきれないものがありました。
エリカのことも忘れないであげてほしいけど、側にいてくれた柚島さんをもっと大切にしてあげてくださいね。

いやあ、すばらしい。これほどまでに熱く、それでいて温かさを感じさせる家族物語を読ませてもらえるとは思ってもいませんでした。まっすぐな思いに痺れまくりです。読む度に、幸せな読後感を与えてくれるシリーズですね。ああ、良かった。ほんと読んでよかったと心から思いました。
文句なしで大絶賛、文句なしでオススメのシリーズです。

世界平和は一家団欒のあとに 3 (3) (電撃文庫 は 9-3) - 橋本 和也

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橋本 和也

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