「サクラもよく見ておくと良いよ。……この人は魔法士戦力なんか一切使わずに、自分の演説の力だけで、この状況を五分にまでひっくり返すつもりだから」
大気制御システムの暴走による冬の時代、続く世界大戦の魔法災害によって、人類が滅亡の危機にある中、物理法則を操る魔法士たちの戦いを描くシリーズの第六弾の下。マザーシステムの今後をどうするか。ニューデリーの未来を決する長い一日を描くお話です。
これまでこのシリーズでは多くの人の思いに涙させられましたが、今回も……主席執政官アニル。彼の思いと言葉は、人を奮い立たせ、胸を打つものがありました。会議に割り込んできた賢人会議を相手に一歩も譲らず、真昼の策によって、圧倒的不利な立場に追いやられても、演説によって五分に戻し、暴徒を存在感のみで押さえ……涙が浮かぶ。しかも、迷える錬のために、考えさせる機会を与えたその姿に、慈しみを感じずにいられなかった。 いまはまだ寄るべき想いが定まらない錬だけれど、フィアと共に考えていってほしいと思う。
そして、これまでそれほど目立っていなかったクレアもまた、ひとつの思いに到達したところがとてもよかった。マザーシステムについて親権に討論する人たちをみて、信念を目の当たりにし、そして魔法士は道具じゃないという思いから、ふっきった彼女が、全力で立ち向かう姿は、見ていて気持ちよかった。ひとりだったら倒れていたかもしれないけれど、彼女を見つめてくれる子がいたら、恥ずかしい姿を見せるわけには行かないよね。お茶という約束がいつか果たされますようにと祈りたくなります。
それにしても、マザーシステムにより残された時間っていうのは、ちょっと驚きだった。こうなると強引にでも動こうとする賢人会議……というより、真昼の思いもわからないでもない。でも、人は神じゃない。このあたり、今後に響いてきそうで怖いなあ。なんせ今回の真昼の最終目的は、どうみたって悪人だし。
止められなかった月夜が、一歩踏み込んだ方向に行ってしまうのは、なんともやり切れませんが、いつか思い出のような、錬と真昼、月夜の三人とフィアで、誕生日を祝えるような、そんな日が来てほしいです。
ウィザーズ・ブレイン 〈6〉 再会の天地〈下〉 (電撃文庫 (1500))
三枝 零一
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