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[壁井ユカコ] 鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3

今度こそ山田さんに頼んでみてね ― 母さんのお願いを断れなかった梢太は、ここ最近、父親のことで孤立しているクラスメイト、山田華乃子に声をかけた。遊びに行ってもいいかと。どうやら、母さんは山田の着ぐるみ父さんに惚れてしまったらしいので、ここはひとつ、山田家をじっくり観察してやろうと思った梢太は、いつしか当日が心待ちになって……

という「加地くんちと山田さんち」を含む三編からなるお話ですが、いやあ、初っ端の「加地くんちと山田さんち」は、素敵ですだったなあ。ぬいぐるみ父さんに惚れるって、どんなお母さんだよとか思ったけど、ピンチのときに助けてくれる人ってのは、やっぱヒーローになっちゃいますよね。……なる……かなあ。

ともあれ、家事全般が下手で、男運も悪いお母さんが惚れた相手ということで、山田パパが本当にいい人なのか、加地くんがチェックしにいくお話でしたが、どちらかといったら、華乃子ちゃんに惚れていく加地くんって展開になっていったのがニヤニヤです。加地母が苦手(というか録にできない)料理を、作ってしまう華乃子ちゃんってところで、見る目変わったみたいですね。やっぱ男を虜にするのは料理か(おい)。加地母は、抜けてるけど、山田パパとは結構お似合いな気がする。

平和な時を過ごしたとはいえ、母さんを渡すには……と思い始める加地くんは、むろん母さんの事もあるだろうけれど、ぬいぐるみの中に入ってるのは、本当に山田パパなのか?と疑問を華乃子ちゃんに投げかけて、困らせる姿は、気になる女の子がいたら、ついついちょっかい出したくなるのが男の子って感じもあったなあ。
当然パパだよと否定する華乃子ちゃんも、いろいろあって正体を確かめに走るんですが、ここからの冒険が素敵にファンタジーでしたね。いったい山田パパは何者なんだとか野暮なこと考えちゃダメかしらとか何とか思いつつ、着ぐるみドライヤーシーンのイラストに心癒されてる僕がいました。あれはすごすぎる。

冒険を通じて、仲良くなったどころか、自分でも気づかぬ思いを心に残した加地くんでしたが、母さんがまかり間違って再婚したら、華乃子と家族になっちゃうしってことで、気苦労耐えない加地くんが可哀想で、でも微笑ましかったです。

ちなみに番外編というかこぼれ話として「着ぐるみには着ぐるみを?」という短編が、最後に収録されてて、山田パパと加地母のデート時の裏話が描かれてます。山田パパに幸あれ!

二編目の「明日夜9時、と言わせるまでに2週間かかった、というだけの話」は(長いな)、前作の終わりから、気まずい空気のままなキズナと有生が、停電でエレベータに閉じ込められて、というお話。相手が何もいってこないなら、自分は何も言わないと、意地を張るキズナの乙女心が可愛いです。幾度となく、話を促そうとする努力が甲斐甲斐しいぐらい。また有生も、あとひと言言えばってところで、止まるんだから、どっちもどっちな意地っ張り屋さんですね。結局どうなったかは、タイトルを見てもらうって事で。
ちなみに、一編目と同じ夜のお話なので、山田パパとかちょっとリンクしてるところがあって、思わずにやり。

三編目「アッサム・メレンをミルクティーで」なんて素敵なタイトルとは裏腹に、殺人事件のお話。しかも容疑者・有生。あの男の真の悪さは世界トップレベルじゃないでしょうか。留置所に入ったほうが、健康的な生活を送れるってところが、有生らしくて笑ってしまいましたが。
有生を助けるために、キズナがいろいろ危ないことしでかしてましたが、途中から有生のためってだけじゃなくて、新たな住民ロミオのためにって変わるところが、キズナらしいです。なんだかんだ言って優しいや。

最後に有生が、安堵の言葉を心の底から吐き出してましたが、それを聞いて、嬉しくも切なくなるキズナの心も複雑だなあ。自分の心はわかっているだろうに、それでも傷つくのを恐れ、心を閉じ込めようとする様は見ていて辛いものがあります。
ようやく仲直りができたとはいえ、二人の関係が今後どうなっていくのかはわかりませんが、傷つきやすい二人の未来は、できれば明るいものであって欲しいと、そう思いました。

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3 (3) (電撃文庫 か 10-13) - 壁井 ユカコ

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3 (3) (電撃文庫 か 10-13)
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