猫、犬ときて、次に真奈が拾ってきたのは、人間だった。どうやら彼は、海へ向かっている途中に、空腹と疲労で倒れたらしい。交通機関など、もはや機能していない。つまりは歩いていくしかないが、今の彼にそんな体力はないはずだ。
だが、彼の決意は固く、また真奈の視線による懇願に負けた秋庭は、街中でほっぽりだされている廃車寸前の車を使って、海へを目指したが……
人が塩化するという「塩害」の危険性に世界が襲われている中、偶然出会った真奈と秋庭の恋が、連作短編のような形式で語られるお話です。海を目指す男、刑務所を抜け出してきた男などの話を経た後に、自分たちの傷を見つめなおして、塩害に立ち向かうという感じですね。
一度、文庫本で読んだんですが、単行本化に合わせて「その後の話」の短編も収録されるってことで購入。
大まかな話は覚えていましたが、それでもやっぱりグッとくるものがあるなあ。特に海を目指す遼一の話は、「塩害」の恐ろしさを感じさせてくれて、それと同時に愛するものへ気持ちも伝わってくる、切なくも素敵な物語でした。
他の人と触れ合ったことで、真奈は、自ら逃げ出してきた傷と立ち向かうことになるんですが、このときの秋庭がかっこいいですよね。口は悪くとも、優しく守ってあげてるところは、ほんと良かったです。それまででも、惹かれていたと思いますが、このとき、真奈ははっきりと自覚したんじゃないかなあ。
一方の秋庭も、十歳年下という真奈に惹かれつつ、なかなか表に出さなかったですが、このふたりをかき回した入江が楽しかったですね。
やっぱりさ、世界を救うなんてどうでもいいんですよ。愛する人を助けるために、人は動くんだと思います。素敵なラブストーリーでした。
俺たちが恋人同士になるために、世界はこんな異変を起こしたんじゃないかって、そう思うんだよ。
ちなみに、その後の話は、ルポライターを目指す生意気な男の子の話、いい仲になったけれど結婚までは勧めなかった自衛隊員の恋人たちの話、入江が拉致されたお話、ふたりで秋庭の実家を訪れるお話の四編です。
一番好きなのは、自衛隊員の恋のお話ですね。この人たちも「塩害」のおかげで、結ばれた人たちだよなあ。ベッタベタな面白さは「クジラの彼」(感想)に収録されててもおかしくないぐらいですよね。人の心の醜さというか、弱さみたいなもの感じたりしますが、それを優しく甘く包んでくれる相手とのやり取りにニタニタです。いつか、こんな恋愛してみたい。そう思ったりしますね。
いやあ、楽しかった。大満足な一品です。オススメオススメ。文庫版を読んだことがある人も、ぜひぜひ手にとってほしいですね。
塩の街
有川 浩
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