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[佐野しなの] リヴァースキス

ある朝、目覚めると、俺は俺に抱え込まれるように抱かれていた。夢じゃなく、たしかに俺の目の前に俺の顔がある。ふと、自分の体を見下ろしてみたら、何と胸が膨らんでいた。俺、女になってる。それも美少女に!どうやら、俺の体を事故で死んで幽霊になっていたトモヨシが乗っ取りやがったらしい。体を返せと迫ったら、理想の女の子とのちゅうをすれば未練なくなるかもと言い出してきた。その理想の女の子というのが、今、女の体になっている俺のことで……

目が覚めたら性別が入れ替わって美少女になってしまった善と、善の男の体を乗っ取ってしまった幽霊トモヨシがキスをめぐってドタバタを繰り広げるコメディです。いやあ、楽しい楽しい。
いくら自分が美少女になったからといって、元自分とキスするのは嫌ってのはわかりますね。想像しただけで、何気に気持ち悪い。必死で回避しようとする善の気持ちがよくわかります。っていうか、キスしたら本当に消えてくれるのかもわからないのに、できるか!と思ったりなんだり、ってやけに主人公に感情移入してるな。

自分じゃできないから、他の美少女とキスすれば未練なくなるかもと、街に出て美少女を探しては、何とかキスさせようと強引な手段を取る善の空回りっぷりが楽しいです。恋心がわからないというよりは、変に意地張ってるだけな気もしますが、バカだなあとニヤツキまくりでした。テンション高いツッコミが楽しくて楽しくてしょうがない。

美少女になった善と善となったトモヨシの関係が、親友やらクラスメイトやらに、ちょっとだけばれてしまったりするんですが、そこで出てくる人たちの適応の早さがまた楽しくて。例え中身が男だと知っていても、美少女だったら構わないという親友の割り切りっぷりも楽しかったですが、時に恐ろしく、時に乙女心全開な和歌が好きだったりします。

それにしても、オチのつけ方がうまいですよね。格話の初っ端のほうに世間話のようなやり取りがあるんですが、それが毎回オチに絡んでくるあたりで、うふふと笑ってしまいます。さらには、どーしてもキスできない心境とかにも、何気に手回しがあったりして、なるほどと思った次第。

個人的には、トモヨシって実は……と思っていたので、ひょっとしたら、ひょっとして?なんて思ってました。なもんで、皮肉にも逆転するような終わり方には、あれ、と思ったんですが、微笑ましかったですね。いや、なんつーか、よくよく考えると気持ち悪いんですけど。

ともあれ、この話は、続けようと思えば続けられそう。今までは出会った人たち全員に正体知られちゃってますが、逆に隠すようなことがあると、また一味違った面白さがありそうなので、期待したくなりますね。
第7回電撃hp短編小説賞大賞受賞作。

リヴァースキス (電撃文庫 さ 12-1) - 佐野 しなの

リヴァースキス (電撃文庫 さ 12-1)
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