純は人とキメラの間をさまよい、綾佳もまた体に異変を感じていたとき、京都で飛行機事故が発生した。修学旅行生が亡くなったことで話題になったが、そのせいか「モノ」が溢れているという。七倉の本家があるが、食事には事欠かなくなる。だが、京都では「モノ」だけでなく、かつての仲間と、さらに純たちを狙う仙谷の気配が見え隠れして……
霊的なモノに取り憑かれたことで、人とモノとの間の存在キメラとなってしまった男女の物語の最終話です。取り込んだモノの影響や体の変化からか、今までとは違って、三人が三人とも退廃的というか、どこか諦めな空気を感じました。この雰囲気には、なんともやるせない気持ちでいっぱい。
そんな三人が「モノ」に引き寄せられるかのごとく、京都に集まってきたわけですが、かつての知り合いや、敵対したはずのモノ祓い師たちとのやり取り、京都の結界を引き裂こうとする者の思惑などを経るうちに、少しずつ意識が変わっていくところが印象的でしたね。
明るい未来なんて想像できないだけに、真里と純のやり取りとか涙モノです。
もっとも変化があったのは、決別した水藤でしょう。人であることを止め、何かにつけて無関心出会ったはずなのに、七倉の幼き子の眼差しにイラついてしまったのは、自分の中の良心が疼いてることに、内心では気づいてたんでしょうね。指摘した戸塚の言葉に迷いを見せたとき、ああ、やっぱりこの人は優しすぎたんだなと、優しいからこそ、逆方面に行ってしまったんだなと思いました。固まった心を溶かすような涙に、どれほどの思いが込められていたことか。
愛する人と共にいることを夢想したのに、それでも、それだからこそ、愛する人と分かれる決意をした水藤の心に切ないものを感じました。
水藤だけでなく、純にしろ、綾佳にしろ、自分についてはどうでもいいけど、仲間は何とかしてあげたいと思う気持ちが伝わってきて、己を犠牲にしてでもという水藤と、水藤の気持ちに気づいてしまった純の声にならないやり取りは、もう辛くて辛くて。
キメラたちの哀しみは、残酷なようで、どこか透き通っていて……でもやっぱり哀しみに満ち溢れていました。周囲の人たちの哀しみこそ、僕の思いと一緒なんだと思います。
全員が全員ハッピーになることはありえないお話でしたが、それでも前を向いてくれることを見せてくれた最後に、良かったなあと思いました。静かではあるんですが、心揺らしてくれる感動に酔いしれましたね。素敵な最終巻でした。
哀しみキメラ 4 (4)
来楽 零
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