今まで一度も口を利いたことがない矢島葵との出会いは、学校の図書館で、彼女の書いている物語に触れたときが初めてだと風見徹は思っていた。でも、本当に?なぜかぼくは奇妙な事を考えていた。
ぼくは……おれは……彼女と何度目に出会ったのだろう。
ハッと気づいたとき、おれは半壊した都市の錬兵場で、騎体に乗っていた。「異海」を倒すための新兵として……
現代の高校生の風見徹と「異海」と戦うために騎体に乗る兵士トールというふたつの世界が交互に描かれていく物語です。語り手の名前と「眠り病」が共通項ですが、いやあ、これは面白いですね。
現代の方では、今まで本を読んだ事が無いのに、葵と会うために、語り合うために、図書館通いをしていくうちに、いつしか物語に入り込んでいく徹がいいなあ。本についてのイメージとか思いには、共感するものがあります。
普段はクールだけど、好きなことについては、熱心に話してくれる葵とのやり取りは、とても雰囲気が良くて、さらに幼馴染の奈央子や友人のいつまで見てても飽きない感じがありました。
普通に過ごしていた日常の中で、ほんの少しズレを感じるところがあり、次のときにまたひとつズレがある。そして、気がつけば、修復不可能なぐらい歪んでいるところは、何ともホラーテイストですね。
もうひとつの「異海」方面は、大切な人を奪った敵に一矢報いたいとするトールの話ですが、はじめは孤独だったトールが、騎体の使い方を学び、敵と戦っているうちに、少しずつ仲間と打ち解けあうところとか、うまいよなあ。確実に変わっていっているのに、あまりに自然なので、指摘されるまで気づかなかったです。
「エリカ」については、はじめ痛々しく思っていましたが、現代の方でいくつかわかったことをつなぎ合わせると、そうとも言えないのかもと思い始めております。
片方の世界の話だけでも面白いのに、それがふたつもあって、何らかしらの繋がりを感じさせつつ、どちらの世界も不安を煽ってくれているので、面白いことこの上ない。
最後の最後で、徹が自らの存在すら疑うような事実に遭遇しましたが、この謎はいったいどうなるんでしょう。次作の完結編がものすごく楽しみですね。
ちなみに、あとがきによると、もともとのタイトルは『ワーズ・ワースの機兵団』だったそうです。『ワーズ・ワースの放課後』と、つながりは無いそうですが、同じ手法で描かれているとか。
本作がとても面白かったので、『ワーズ・ワースの放課後』にも手を出してみようと思います。
レギオン―きみと僕らのいた世界 (電撃文庫 す 3-13)
杉原 智則
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