とある下級官僚の家に、盗賊が入ったという。母屋が全壊するほどの風が吹き荒れたということで、ひょっとしたら天狗あたりが絡んでいるのかもしれない。ならば、このまま放っては置けないと、保胤と吉平は、小五郎の元へ行く事にしたが、盗賊たちは、主たちが不在の晴明邸へと向かっていて……
保胤と時継の変わらぬ関係や、それを見ている周囲の人の叱咤激励が、なんとも懐かしい。久しぶりに読んだのに、あっという間に物語の雰囲気に入り込んでしまいました。やっぱりいいなあ。
今回は、晴明の体を乗っ取ろうとする妖が、晴明の妻である梨花と時継を人質にして、という展開でしたが、これまであまり焦点の当たっていなかった梨花が中心となるお話でした。
力でかなうはずもないモノに連れ去られたにもかかわらず、冷静な姿はさすがですが、側に子がいたってことの方が大きかったんじゃないかな。むろん、晴明たちを信じてるってこともあるんでしょうけれど、起きてしまった出来事をしっかりと受け止め、優しく包み込む姿に、母なる強さを感じました。なるほど、晴明の頭が上がらないわけだ。
さりげない描写に、何度となく温かい気持ちにさせられて、ああ、家族っていいなと思いますね。
それともうひとり、新たに登場した妖の天一が、いい味出してましたね。彼女の言葉には、厳しいものがありますが、それでも徹しきれなかったのは、共に歩んだ道のりがあったからなんじゃないでしょうか。
誤解される言動をする心の内を思うと、切なさを覚えますが、時継のように真っ直ぐものを見る人もいるということを知ったことは良かったと思います。
二人で杯を交すやり取りには、時継らしさを感じて微笑ましい気持ちになりますね。その後に続く、開かれていく心と母なる思いに触れていくところは、ホント素晴らしかったです。これほど、涙が止まらなかったのは、久しぶり。文句なしで大絶賛です。
迫力あるような戦いのシーンなどはありませんが、「地味であっても滋味のあるお話を」という著者の言葉がぴったりなお話でした。
今回の件で「母」や「子」をいろいろと意識させてくれたので、次があったら、保胤と時継にひょっとして……なんて、いろいろ想像してしまいますね。
個人的には、空鐘よりも雰囲気が好きな作品だけに、これからも続いて欲しいなあ。
オススメ。
陰陽ノ京 巻の5 (5)
渡瀬 草一郎
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