蒼衣は、惨劇の場へ<葬儀屋>を案内していた。もはや、海部野家のその部屋に生きているものはいない。この泡禍の中心となる潜有者の可能性が高い千恵は、惨劇に巻き込まれて、両足を大やけどした。まるで、人魚姫が人となるための代償として、足を痛めたように。
やはり人魚姫の物語が絡んでくるのかと、神狩屋と蒼衣が謎を解こうとする間にも、悪夢は続き……
上巻の続きですが、いやあ、壮絶ですね。1、2巻はまだ手加減していたんだなと思いました。泡が襲ってくる恐怖が、これでもかと描かれています。
まあ、泡については、恐怖というより嫌悪感ですけど。ぷちっ、ぷちっというシーンでは、鳥肌が立ちました。食事しながら読んでたので、やばかったです(気をつけよう)。
誰が「潜有者」かと、状況から推測していくところは、毎回楽しみにしているところですが、今回もよかったですね。しゃぼん玉と髑髏の関係や、童話の新たな解釈など、なるほどなるほどと思わせてくれるお話には、とても惹かれるものがあります。こういうの調べていったら面白いんだろうなあ。
潜有者探しと同時に語られていく、神狩屋の過去話がまた重苦しいものでした。妻の志弦の思いはわかるだけに、残された遺書の言葉に、残された食事を見て思う神狩屋の気持ちに、涙がこみ上げてきました。
ですが
次に続く言葉で一瞬にして血の気が引きました。
共にいたいと願ったことが、歪みを生んでいくところは、恐ろしく思えます。
歪んでいるといえば、この状態でも、妻を愛している神狩屋も歪んでますよね。普段が決してそう見えないだけに、時折見せる冷たさが、恐ろしい。
怖さや嫌悪感ばかりが目に付く感じではありますが、それらを抜群に利用したミスリードにやられ、二転三転する展開には、ページをめくる手が止まりません。モチーフとなった人魚姫のストーリィに、カチっとはまっていく結末は、とてもよかったです。
最後に泡と消えた人の思いよりも、残された人の思いのほうが辛い気がしましたが、これからこの人はいったいどうなるんだろうと、思わず考えてしまいますね。
いやあ、面白かった。いろいろ感情を引きずり出されるところがありますが、それ以上に話へ引き込まれるシリーズですよね。
次はどんなグリム童話をモチーフにして、どんな物語を作り上げてくれるのか、とても楽しみです。
断章のグリム(4) 人魚姫・下
甲田 学人
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