Home > ライトノベル > [柴村仁] E.a.G.

[柴村仁] E.a.G.

ゴドーの住んでいる地区は、決して治安はよくない。お嬢様学校の制服を着たキアラがくれば、目立つのは当たり前だ。あいつはこんな場所に来ちゃいけないと、つい突き放したものの心が痛む ― とそのとき、キアラが倒れた。
何があったのかと痙攣している彼女を押さえ込んだとき、頭の上から声が聞こえた。鴉がしゃべってる?転送完了という言葉の後に、キアラは目を開けた。彼女がゴドーを見る目は、まるで別人で、引きとめようとしたら、拳一発で沈められて……

吸血事件を引き起こしているのは、人類とは異なる存在である空電体で、キアラに乗り移った進行体の D と鴉に乗り移ったスモールは、彼らを駆除するためにこの場所にやってきて……というお話です。

不器用な優しさしか示せないとはいえ、少なからず思っていた人が目の前で、他の生命体に乗っ取られたら、そりゃついていくよなあ。体に傷がつかないか、いろいろ心配する様が真剣なだけに、逆にコミカルに感じます。特に D が、キアラの体については気にしない性質だから、周期的生理活動による子宮内膜の排卵が起きたときに、せっせと生理用品を買い揃えるゴドーの姿が哀愁を誘いますね。渋い役なのにおかしい。

吸血鬼事件の裏にいる人間を探すため、雑魚を倒し、騒ぎを起こしと、非常にストレートな展開だと思っていたら、あれ?と思わされて、気がつけば疑心暗鬼。反発しあいながらも、どこか仲間意識を持ち始めているなあと思っていただけに、さりげない描写にドキドキさせられます。

なぜそんな行動をとるのかという、ゴドーの複雑な心境は、どこか理解しがたいところがあったりするんですが、キアラのこと、仲間のことなどが絡む過去の話や、現在隣にいる D とのやり取りを思い返すと、どこか納得させられるところもありました。この微妙で、複雑な感情が伝わってくるところが良かったです。

一方の D やスモールは、目的がひとつだし、そのまま突っ走るだけなのに、気がつけばゴドーのことも考えているところが、すごい好き。ぶっきらぼうで、がさつで、大雑把なのに、キアラの体を傷つけちゃったときに、必死に言い訳してる姿が微笑ましいぐらい。いつの間にやら結ばれていた信頼関係が素敵でした。なんだ、似たもの同士じゃないか。

事件の結末は、ゴドーにとって辛いものだったかもしれませんが、それを汲んで、否定に走らせない D とスモールの言葉が良かったです。何より置き土産がニクい。ハメられたことに気づいたとしても、ゴドーにはそれを振り払うことなんてできないですよね。
大切な人を守るために、祈りたくなる。そばにいたら抱きしめたくなる。そんな終わり方でした。
いやあ、これは良かったです。

続きが出るのかどうかわかりませんが、出るのだとしたら嬉しいな。

E.a.G. - 柴村 仁

E.a.G.
柴村 仁

メディアワークス(文庫)
Amazon | bk1


booklines 関連エントリー
柴村仁 / 電撃文庫 / ライトノベル

Home > ライトノベル > [柴村仁] E.a.G.

Trackback:5

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/1444
Listed below are links to weblogs that reference
[柴村仁] E.a.G. from booklines.net
[書評][柴村仁][E.a.G.][アクション][シリアス][魔物/妖怪][★★★★]E.a.G. from いつも感想中 2007-02-15 (木) 09:40
E.a.G. 作者: 柴村仁 出版社/メーカー: メディアワークス メディア: 文庫 「我が家のお稲荷さん」シリーズを読んだ事が無かったのだけど、この本...
E.a.G from Alles ist im Wandel 2007-02-19 (月) 02:57
E.a.G.posted with 簡単リンクくん at 2007. 2.19柴村 仁〔著〕メディアワークス (2007.2)通常24時間以内に発送します...
E.a.G. from 読了本棚 2007-02-19 (月) 18:36
連続吸血鬼事件に震撼するスラム街。その片隅でそれは起こった。ゴドーの目の前で、可憐な少女の体を借りて現れたのは「空電体」を駆逐する為に言基体から派遣された...
E.a.G. from MOMENTS 2007-03-05 (月) 01:40
読了。 『我が家のお稲荷さま。』とは大きく雰囲気の変わった、あるいは、ライトノベルらしい作風の作品。もっとも、今後の展開を見据えてなのか、作中にて設定が語...
電撃文庫・3月の感想2 from 詠み人知らず 2007-03-15 (木) 00:04
■柴村 仁×也『E.a.G.』  ★★★☆☆ 凄惨な吸血鬼事件に震撼する街の片隅で、可憐な少女の姿を借り、 それは突然現れた。「俺はDDF/AH-07...

Comment:2

hobo_king 2007-02-15 (木) 15:25

この本は私も続編出てほしいですね。
上手くまとまっている感じがする割にはまだ謎だらけですし。ヒロインも可愛いし、主人公も人間臭くていいですしね。

deltazulu 2007-02-15 (木) 20:47

いろいろ気になることありますよね。
続編出るかなあ。出てほしいなあ。

Comment Form
Remember personal info

Home > ライトノベル > [柴村仁] E.a.G.

Search
お気に入り

虜囚の姫と疎まれる第二王子の旅路を描くファンタジー。

花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫) - 淡路 帆希

オーソドックスではあるんですが、各キャラの心の変化が丁寧に描かれていて、とてもいい。切ないお話ではあるんですが、最後の心に温かいものが残りました。大切にしたい思いが詰まってるお話です。 → 感想


まさかこんな素敵な青春物語が読めるなんて!

電波女と青春男 (電撃文庫)電波女と青春男〈2〉 (電撃文庫)

甘酸っぱく、時に遣りきれない思いに苛つくこともあるけど、高いところから飛んでしまうような青春模様が素敵でした。笑いも沢山あるし、ほんと面白かった。とてもオススメ。


聡明であるが故に孤独な少女プルーデンスと、蒼い衣をまとった名無しの吟遊詩人が、鳥の塔に至る迷宮の謎に挑むファンタジー

鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫―ホワイトハート)

世界観といい雰囲気といいハマりまくりです。知識を持つが故に、両親や兄から疎まれて、家族といても孤独を感じていた少女なんですが、それをぐっと堪えて、誇り高さを忘れない姿勢が素敵でした。続きが出てくれると最高に嬉しいです。→感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下


十八番目の皇女という立場から、何も手にすることができなかった月華が、心の内に「龍」を飼う涼狐の剣舞に惚れて、剣を手にする中華風ファンタジーのボーイ・ミーツ・ガール。

DRAGONBUSTER 1 (1) (電撃文庫 あ 8-13 龍盤七朝)

淡々と語られている物語だと思っていたのに、気づけば引き込まれています。溜め込んだエネルギーが、次なる巻で爆発してくれることでしょう。背筋がゾクゾクするほど、楽しみでなりません。→感想

なかのひと

Page Top