後ろに座っている少年少女が、タクシーに纏わる事件や怖い話をしている。そういった話が嫌いなタクシー運転手は、聞きたくないのについつい聞き耳を立ててしまっていた。怖い話をすると本物が引き寄せられるというが、回避策を知っているという少女たちは、話の途中で降りてしまった。
きっと何も起こらないと運転手は自分に言い聞かせていたが、気がつくと、ランドセルを背負っていた女の子が、後部座席に座っていて……
針山さんの周囲で起こる複数の話がどこかでリンクしあって、最後に繋がっていくという成田良悟お得意の物語ですが、初っ端の「たくしぃえれじぃ」からやられました。普通の都市伝説的なお話なのに、誰でも知ってるような話なのに、何ですかこの怖さは。思わずゾクゾクしましたよ。おかげで、一気に引き込まれました。
タクシーの都市伝説、無敵の下級戦闘員、殺し屋とゾンビ戦争、ヒーローの苦悩などなど、いろいろありましたが、個人的には「37564人の悲劇」の人間関係がとても好きですね。
ザコキャラの立場のはずなのに、ヒーローすら余裕で打ち破れるという、圧倒的戦闘力を持ってしまった下級戦闘員のお話ですが、強すぎるが故に、組織の仲間からも恐れられてしまう孤独が切ないです。
孤独と、何をすべきかわからないという焦りのような、諦めのような、そんな感情を抱えていただけに、女戦闘員シルクとのやり取りは、温かいものを感じました。
思わず、自分の苦悩を話してしまったのは、辛いからという事もあったでしょうけれど、相手の優しさを感じたからなんでしょうね。それを情けないと思う気持ちはわかりますが、相手からしたら嬉しかったでしょうね。
彼女を守りたいという気持ちが生まれるのは、ごく自然のことだと思いますが、そのことが逆に悲劇になるというのは、何とも残酷でした。生きる理由を失くしそうになったときの叫びの大きさがわかるだけに、応えた総統の言葉が胸に響きますね。
「あのマークは、まだ消したくない……」
思わず、心に熱いものが生まれました。
心にあった熱いものを、大きく燃え上がらせてくれたのは、トリを飾る「柏木クロスの真っ赤な死」の撃滅戦隊というヒーローのお話でした。
ヒーローでありながら、悪の組織の下っ端にやられて落ち込んでいたときに、追い討ちをかけるような事実は、心の支えを根本から砕くものであっただけに、普通だったら立ち直れなかったでしょう。
それでも、子供たちのためにヒーローたらんと、格好をつけるクロスの心にやられました。熱いよ!熱すぎるよ!
複数の物語が収束していく、いわゆるカタルシスみたいなものは、前作ほどではないかもしれませんが、ひとつひとつのエピソードや次に繋がっていくという点については、今回のほうが良かったと思います。
いやあ、面白かった。
次は針山さんの周りで、どんな出来事が起こるのか楽しみですね。
世界の中心、針山さん(2)
成田 良悟
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