真夜中に電話をかけてきたのは、いまりとさよかだった。背後で爆発音が鳴り響く中、啓太に来てほしいということだけ告げられて、電話は切られてしまった。何とかして行ってあげたいと思ったが、スイスに一瞬でいけるわけない。
そう思っていたら、てんそうがひっぱりこんできた赤道斎が、スイスに行くことは可能だといって、秘蔵の魔道具を取り出したが……
暇そうにしている啓太を独占するため、ともはね、カオル、たゆね、フラノが、けん制し合う第一章が、何とも平和で面白いですね。ともはね、カオルは子供っぽく、たゆねは拗ねながら、フラノは体を張ってと、それぞれ自分の特徴を生かした誘い方が素敵に可愛いです。珍しくようこが、何も言わないなと思いましたが、いやあ、まさか、そんな手を使ってくるとは思わなかった。大人の女の演じっぷりが見事です。
いかにも、いぬかみだなあと思ったのは、第三章。大妖狐と赤道斎が問題を起こしたりしていないか確かめるために、管理官が仮名のところにやってくるお話です。どう考えたって、ふたりを御することなんて無理なので、ようこたちを大妖狐たちに変身させて、その場しのごうとしたら……から始まる裏目の出方が、バカバカしくも面白い。こういった変な方向へのドミノ倒しストーリーがうまいですよね。BLで仮名がマンションから追い出されなくなるとは、さすがに予想もつかなかったです。
とまあ、いろいろ笑えるお話が多かったですが、今回、いつもとは別人のような活躍をしたのは、啓太でした。スイスに飛んでるせんだんたちが、薫の行方の手がかりを得るため、啓太に助けを求めて、というお話で、啓太が犬神を使って、情報を握っている精霊と戦うんですが、今まで複数の犬神を使ったことがないのに、意外や意外。
単純かもしれないけれど、全力で戦うことも楽しさが、これでもかってぐらい伝わってきます。まさか、犬神で、こんなに熱い気持ちになれるとは思わなかったです。
出来の差に、今まであまり比べられることのなかった薫と啓太ですが、ここにきて薫の犬神たちの心境に、いろいろ変化が起きてるのが印象的ですね。
周囲の状況とは切り離されたところで、動いているなでしこの心境が描かれるエピローグは、何とも悲しく切ないです。薫がいなくなってから、何かと黒い印象がありましたが、むしろ、すべてを切り離さなければ動けないところに、優しさを感じました。であるならば、まだ、戻れるはずです。
どうやって、なでしこを止めるのか。啓太やみんなの思いは伝わるのか。
次が最終巻ということですので、どうなるのか楽しみですね。
いぬかみっ! 12 (12)
有沢 まみず
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