魔物がはびこる森の中で、ミミズクはふたつの月を見つけた。空に浮かぶ月と、同じぐらい美しい美貌を持つ人と。ひょっとしたら、人間ではないかもしれない。それでもよかった。ミミズクの願いはひとつだから。
「あたしのこと、食べてくれませんかぁ……!?」
美しき魔物の言葉は冷たかった。
どうしたら、食べてもらえるのかなーと、魔物の森で思案したミミズクは、魔物のクロと出会って……
鎖に繋がれ、額には焼きゴテによる数字が入れられ、人の嫌がる仕事をさせられていた奴隷のミミズクが、夜の王であるフクロウや、魔物のクロと出会って……というお話です。
死にたいと思って、魔物の森に入り込んだ少女の気持ちを考えると、切ないものがありました。何が不幸かということすら理解できない境遇であっても、心が傷つくことはあるでしょう。美しき夜の王フクロウに出会って、冷たくされながらも、追い続けていたのは、死んでもいいという思いもあったでしょうけれど、美しいものに触れたいという思いもあったんじゃないかなあ。
明るくとも、心に何も持たない少女が、魔物たちの優しさに触れて、だんだんとフクロウのために何かしてあげたいと変化するところがいいですね。ミミズクの純粋な思いと行動から、拒絶していたフクロウが、初めて心を許した入れ墨のシーンは、思わず頬が緩むぐらい、幸せな気分にさせられました。
魔物に囚われている少女がいると認識した人間たちの行動は、善意のものとはいえ、相手からすれば無粋極まりないものでしたが、それでも、フクロウが動かなかったのは、ミミズクのためを思ったからでしょうね。感情を理解していなかったミミズクにとっては、人と触れ合うことが、大切だと思ったんでしょう。ミミズクに施した処置とその後の行動に、フクロウの不器用な優しさが伝わってきました。
やさしき忘却から多くのものを学び、ありがとうという言葉の意味を理解して、大切にしてもらったことに心から感謝して、それでも会いたいと思う人がいる、それでも帰りたいと思うところがある。
幼いかもしれないけれど、これは愛の始まりなんでしょうね。
ミミズクが自分で考え、友人の協力を得て、家族へ別れを告げるシーンに、涙が止まりませんでした。
ああ、なんて素敵な物語なんでしょう。
まっすぐで、あまりにもまっすぐで、だからこそ、伝わってくる優しさがありました。沁みてくるような温かさがありました。ファンタジーではありますが、とても優しい童話ですね。ぜんぜん違う話ですが、雰囲気でいったら「狐笛のかなた」(感想)みたいな感じです。
文句なしでオススメ。というか、誰彼構わずオススメしたいです。
もし、迷ってる人がいたら、あとがきを、特にshamrockさんの引用されてるところを読んでみてください。心の琴線に触れるものがあったら、間違いなく買いだと思います。
死にたがりやの少女と人間嫌いの夜の王の、素敵な素敵な物語をぜひ。
第13回電撃小説大賞大賞受賞作。
ミミズクと夜の王
紅玉 いづき
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