エレオノーラは、もはや呼吸しているだけに過ぎない。それでも、せめて陛下が間にあってくだされば、と願うシュニッツラーだが、どんなに急いでも、伝令がシグルドに合流し、そこから三日はかかる。素人判断でも望み薄だと思う感傷がそうさせたのか、シュニッツラーは、エレオノーラが零したギュンターなる人物に纏わる過去を、オスターデに語り始めた。
それは、かつてロットヴァイル皇国で起きた内乱、七皇戦争の終わりも近いころ。ジグルドが18のときのことで……
本編で話には出た(らしいけど覚えてなかった)七皇戦争の詳細と、ただの平民で心優しきジグルドが、なぜ剣を持つことになったのかという、ジグルドの始まりが描かれる物語です。7巻となっていますが、実際のところは番外編です。本編が終わってないのに……と思いつつ、読み進めれば、そこは群雄割拠な物語。いいですね。
目の前で起こった悲劇を繰り返さないためにと、ギュンターが立ち上がって作った義勇軍ですが、普通であれば、鍬や鉈しか持ったことがなかった人間が、そう簡単に用兵としてやっていけるわけがなく、実際のところ、見ていて危なっかしいところが多くてドキドキしますが、乗り切れたのは、ぼうっとしているように見えて、戦略に長けていたジグルドがいたからでしょうね。
他人の視点から描かれているだけに、ジグルドの大器を感じさせてくれます。
このときに、ジグルドたちは、エレオノーラたちと出会ったのかと、意外さはありましたが、このころから、エミリアは一歩下がってたんだなあ。ひょっとしたら、エレオノーラはギュンターを、と思わなくもないですが、このあたりは後々語られるんでしょうか。気になりますね。
義勇軍が如何にして成り上がっていくかという展開は、心踊るものがありますが、敵というか味方がしょぼすぎるのが、ちょっと物足りないです。あそこまで短絡的じゃなあ。だからこそ、特権の腐敗とは恐ろしいと言えるんでしょうけれど。
まあ、これは現在の義勇軍のレベルに合わせてるところもあるでしょう。強くなれば強くなるほど、敵も強くなってくるでしょうから、このあたりは、少しずつ目立ってきた義勇軍の今後の戦いに注目したいところ。
過去は敵だった人が、如何にして味方になったのかというあたりも、語られると嬉しいですね。
ちなみに、あとがきでは、なぜかクローデットの側にいる使用人のエマについて著者が語っていて、そこで、ノウラとクローデットとエマがお茶飲み話をしているシーンが描かれています。ここでノウラが見れる嬉しさもありますが、読んだらにやりと頬をゆるめること間違いなしです。エマの愛情たっぷりな意地悪をとくとごらんあれ。
ゆらゆらと揺れる海の彼方 7 (7) (電撃文庫 こ 7-7)
近藤 信義
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