水藤が先日の事件で具合を悪くしてから、一年半の時が経った。今ではだいぶ具合の良くなってきた水藤とは対照的に、純は、時折、視界がブレるなどの問題が出てきた。あれからろくにモノを食べていないからだろうか。
そんな折に、水藤のバイト先である小学生を相手にした塾で、ちょっとした噂が流れていた。その階段を上ったものの願いが叶えられるという「お告げ」の噂が……。
霊的なモノになってしまったことを隠しながら生きている男女三人の物語ですが、いやあ、すごい。この展開は予想していなかった。これまでのシリーズがあったからこそ、哀しみの大きさ、重さが伝わってきます。
今回は「お告げ」を実行した子供が消えていくお話です。
どちらかといえば、今回は純たちよりも子供たちのほうが主だったかな。勇者になりたいと無鉄砲な行動を続けていた勇輝が、実は過去のつらい経験からなっている話には、胸が苦しくなります。あの体験をして、それでも怯えることなく立ち向かい、自分が勇者じゃないと言えた彼は、もう立派な勇者ですよね。
優等生であった穂高の無謀な行動も、理解できてしまうために、心の底からの願いが胸に痛いです。
子供っぽさに隠されていた複雑な思いの心理描写がとてもうまいと思いました。
このシリーズの特徴でもある人ではなくなっていくことに対する恐怖というか混乱は、相変わらず鋭いです。助けてくれとつぶやく言葉にこめられた思いや、なかったことにできたらという願いを思う場面は、切なさにあふれていました。
ただ、今回は切ないだけでなく、人外だからこそ成し得ることが出来たという展開だったので、いい話でしたね。
ここで終わってたら。
まさか、このあとにもうひとつ波乱があるとは思いませんでした。ただ一枚の紙でここまで連想させられるとは思いませんでした。
いや、すごい。すばらしい。
すべてが繋がってくる展開にゾクゾクさせられました。
次で最終巻とのことですが、どのような決着をつけるんでしょうか。何かしら幸せや希望が感じられる展開になってほしいなと思いますが……。
待ち遠しいですが、怖い気もします。
哀しみキメラ〈3〉
来楽 零
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