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[有川浩] 図書館内乱

両親が職場見学に来るという。職場のみなは協力してくれるものの、何かの拍子に戦闘員であることがバレてしまう可能性がないとはいえない。ましてや、親の期待を重圧と思い、実家に近寄らない郁だから精神的にきつい。だが、嫌だ嫌だといっても、時は過ぎていく。
そして、ついに時はきてしまった。
今日から三日間、郁の Missionは、親に戦闘員職種配属を隠し通すことだ!

という「両親攪乱作戦」を含む 5編からなる短編集。いや、短編集というより若干のリンクがあるので、連作長編といっていいかもしれない。シリーズ化ということで、前作よりも人物描写に力を入れている感じですね。前作で脇役だった各個人に焦点を当てています。戦闘シーンが激減してますが、コミカルさと恋愛要素がアップして大満足な一品。あー、甘酸っぱい。

はじめの「両親攪乱作戦」で心をつかまれました。職場見学にきた両親に、戦闘員であることをばれないよう奮闘する物語。ただ笑えるだけでなく、両親との確執や上官への憧れなど、笑いの中に紛れているシリアスさがいいですね。純粋さに思わず意地悪してしまった柴崎の問いに答えた郁の言葉に、グッときました。

そんな「両親攪乱作戦」の後は、正論男と難聴少女の物語「恋の障害」、篠崎と彼女目当てで近づいて来た男の物語「美女の微笑み」、手塚兄弟の物語「兄と弟」、すべての話の断片からまとめあげていった「図書館の明日はどっちだ」と続いていきます。どれもこれも極上のエンタテインメント。すばらしい。

個人的には、柴崎が大好きなんですが、上官すら手玉に取るような魔性を見せておきながら、単純な落とし穴にハマるところが意外でした。頭がいい故に陥ったというところでしょうか。裏を読みすぎる癖がついてるんでしょうね。だからこそ、一直線な郁と一緒にいることが気持ちいいんだろうなあ。わかるわかる。僕も大好きだよ。 一歩引いて人と接する人間が、胸を痛め、心を熱くするところが印象的でした。たしかに柴崎なら平気だろうけれど、できればそっちにはいってほしくないなあと思ったり。

心情という点では、柴崎も良かったけれど、個人的には玄田と折口のやり取りがとても良かった。出番なんてここだけなのに、心に残るなんてものじゃない。たった一言の言葉に、その一言に込められた思いに、じわりと胸が熱くなりました。わかりあえる人がいるっていいなあ。

シリアスなところでは、いろいろと考えさせられるものがあります。少年法の話なんて、まさにリアルタイムで実名報道が物議をかもし出しただけに、気になるところでした。重要なことを忘れない描写に好感。

それにしても、最後の最後でドツボにはまってしまった郁ですが、いったい明日はどうなるんでしょう。だだ漏れなだけに、隠しておけないことは予想に難くない。でもでも????
ああ、この強烈な引きはズルすぎる。続きが気になって、楽しみでしょうがないです。

ちなみに、作中作(というのか微妙なところだけど)として登場する「レインツリーの国」が、実際に発売されます。これは見逃すことができませんよ。

図書館内乱 - 有川 浩

図書館内乱
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