「……で、どうするんだよ」
「なにがだ」
「これからのことだよ!夫とか妻とかいってたけどどうするつもりだ?」
「大きな声でわめくな。私は耳が遠いわけではない。十分聞こえている」
ククルは静かな声だった。
「そんなに深く考えることはない。一緒に住むだけだ」
井上ククル。未発達な姿はかわいいけれど、それ以上の感情を持てない…はずなのに、彼女の秘密を知ってしまったその日から、犬伏ユージは彼女の夫になるハメに……という秘密の結婚生活を描くラブコメディです。
あらすじだけ読むとものすごくコテコテなラブコメっぽいんだけど、読んでみるとそんなことはなく、成り行き的な感じで一緒に暮らし始めたのに、なんとなく相手のことが気になり、だんだんと相手の感情がわかるようになり。このあたりの描写がすっごいいいですよね。相手は自分のことをどう思ってるんだろう、と気になり始めてからのククルとユージの距離感がとても素敵でした。
もちろん、一緒に住むなんてことは、クラスメイトどころか周囲の人にも内緒なんだけど、さすがに姉には隠し様がなく、それでも何とか隠そうと、ユージが策を練っていくのも面白ければ、ことごとく看破していく姉の推理力も見事でした。パワフルなお姉さんの姿に笑いが止まらないよ。何気にユージは女難の相があるのかもしれないと思ったけど、ま、なんにせよ、ククルのことを守れてよかったねと言いたくなる温かさがありました。
ただ、最後のほうはちょっと尻すぼみで、なんだか拍子ぬける。相手を心配するが故に……というあたりのすれ違いはよかったのに、あっさりしすぎてどうもね。ま、変にバトルにならなかったのはよかったんですけどね。
あと不満があるとすれば学園のお話が少なかったってことかな。
まあ、今回の件で、家庭(?)内とかふたりの立ち位置が見えてきたので、今後は学園内でいろいろあってほしいですね。クラスメイトに秘密にしてるからこその歯がゆさやら嫉妬やら見えてきたら、うれしく思います。続きに期待期待。
オウガにズームUP! (MF文庫 J ほ 1-4)
穂史賀 雅也
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