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[森田季節] ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート

『僕、女の子を殺したんだ』


「私は信じるよ」
その一歩先に踏み出すには勇気がいった。
「だって、私もその子を殺したから。小学生のときに」

殺されても数年でよみがえるが、その人のことを覚えているのは殺した人だけ。殺され、記憶を奪われる存在のイケニエビトの少女と、彼女を友とした高校生・神野、彼の同級生であり、幼いころイケニエビトと出会った少女・明海の三人が繰り広げるビターでスウィートな物語。

里々さんの感想を読んで手に取ったんですが、これは面白かった!

「僕、女の子を殺したんだ」なんて台詞が出てくるので、どんなに殺伐とした話になるのかと思ったら、そこに見えてくるのは、孤独な少女と孤独な男の子が、音楽を通じて触れ合う話で、側にいることが自然になっていくところは、ほんといいんだなあ。
それだけに、二人の間……というか、イケニエビトについての不審な噂が流れ始めて、その噂を裏付けるようにして、少女が焦りを見せ始めるところは辛かった。ああ、これで神野は彼女のことを……と思った次第。

一方、神野の話を聞いた明海もまた幼いころ、イケニエビトを殺めたことがあるんですが、こっちのお話はすごかった。子供らしい無邪気さが限度を超えるとこうなるのか。そりゃ、トラウマのごとく印象に残るよなあ。
でも、イケニエビトたる実祈からしたら、明海という存在は、ありがたかったんだと思います。欠けたリコーダーを大切に持っていたことに、彼女の思いが伝わってきました。

復活した実祈との新たな交流は、とても温かいものがあり、同時に不安も募るから引き込まれます。なんせ、いつイケニエビトの記憶を奪うやからが現れるかもやしれないんですから。
三人で一緒に。
その思いが見えるからこそ、イケニエビトとしての運命が見えるのが辛かったです。三か条を実践するのを見せられたときなんてもう……。

いやあ、面白かった。
「死」という言葉が身近にありすぎるのは、ちょっとアレなんですが、最後には笑顔を見ることができてよかったです。素敵な青春物語でした。次の作品が楽しみだなあ。

第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞受賞作。

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫 J も 2-1) - 森田 季節

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫 J も 2-1)
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