赤い糸に頭部を切断された夢を見た羽田琴也は、目覚めたときの首筋の痛みに不安を覚えながら、学校へと向かっていた。と、そのとき、突然背中から何かがぶつかって来て、思わず前のめりに転んでしまったら、同じ学校の制服を着た下級生の女の子が、背中を踏みつけてきた。年下とは思えない美しさにうろたえながらも、文句を言おうとしたら、霧間留美華と名乗った少女は、わたくしを愛してくださる人を見つけた、と言い出して……
美しく嗜虐的な魔女の留美華と、そんな彼女の「愛する人」ではなく「愛してくださる人」として目をつけられた琴也のラブコメ……というか、コメディなところはあるけど、ちょっと変則的な純愛ものになるのかな。
はじめは、恋愛というよりはホラーな印象がありましたね。琴也の周りで、留美華の影響力が強くなっていく展開には、恐怖を覚えるばかり。自分が琴也をいじる分にはかまわないけど、他人が琴也に何かをするのは許さないといった空気には、ストーカーを相手にしてるような怖さがありました。
また、留美華は「影」を持っておらず、琴也から影を譲り受けようとするので(つまりは琴也の影が消えていく)、脅迫や誘惑によって、右手、左手、と部位がひとつひとつ奪われていく展開もまた、緊迫感を受けました。
ところが、お人好しな琴也が、彼女の境遇を垣間見てから、真摯になって向き合い始めると、恋愛ムードが出てくるんですよねぇ。時折、怖さも見せるんだけど、高飛車な態度とは裏腹に、琴也へ好意を見せていくところがとても可愛い。
それと、体の部位を相手に受け渡すシーンがすごいんですよ。キスすることで、その部分が相手にもっていかれるんですが、自分の部位は裂けるような強烈な痛みと血が吹き出るにもかかわらず、同時に快感も与えられる。この描写がエロティックでたまりません。痛みがあってもキスをやめることができない甘美さには、逆なんですけど、吸血鬼が血を吸うシーンのような淫靡さがありました。
ただ、琴也が留美華に惚れていく展開が、いまいちわからなかったなあ。途中すっぱりと抜けてる気がしました。留美華が惚れていく展開はわかるだけに、もうちょっとそのあたりがほしかったです。あと、鞘当にもならないシスターの存在とか、よくわからなかった。ルミカの説明をするためだけにいたのかな?そこまでならまだしも、クラウスはいらなかった気がする。うーん。
そういう意味では、物足りないというか、何か省いたところがあったのかなと思わなくもないですが、単に利用するだけだったはずの男に惹かれていく魔女の気持ちや、相手のために何かをしたいという琴也の気持ちが伝わってくるところとか、お互いがお互いを思いあう気持ちが伝わってくるシーンが良かったですね。ラストのオチも、非常に留美華らしくて素敵でした。
わりと好きな空気を感じるので、続編とかあったら手を出してみる予定です。
第3回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。
魔女ルミカの赤い糸
田口 一
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