気合を入れて告白したのにフラレて、何もかもが嫌になった依泉子は、橋の上に立った。
そのとき「世界」であるぼくは声をかけた。いてもいなくても気がつかない影の薄い男の子のように見えるけれど、世界である僕はすべての人の物語を知っている。
今まで誰とも意識が合うことはなかったのに、なぜか依泉子とだけは意思の疎通を図ることができたのだ。
そして、僕はいつしか依泉子に恋をして……
やさしい空気が物語を包んでいるものの、どこか切ない雰囲気のラブストーリィ。
依泉子とカイ、奈緒と優也という並列している二つの物語が繋がっていくという展開。個人的には奈緒と優也の話が好きですね。不器用な男の子と女の子の気持ちがとても良かった。
依泉子とカイの話は、なぜ惹かれあったのかということをもっときっちり書いてくれると、もっと感情移入しやすかったかもしれません。
世界を恋人に、というのはなかなかいいですね。すべてを知っている人というのは、恐ろしくもあり、安心もできそうな気がします(どうせ知られちゃってんだから、って感じで)。少しずつ頼っていく姿は、傷つくことを恐れた女の子の姿でもあり、本当の恋のようにも見えました。
ただ、ひっかかるところは、視点が安定していないことかな。三人称なのか、一人称なのか、他の視点なのかがはっきりしないまま進まれてしまうと、はたして誰の感情なのかと思うことがしばしばありました。
このあたりで若干混乱させられてしまうので損をしているのではと思ったりしますが、透き通った雰囲気は魅力的なので、今後も続けてほしいですね。
第2回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。
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早矢塚かつや
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