人は神と、神は化物と、化物は人と、どこがどのように異なり、何が同じなのだろう。
そう考えた途端、暗い廊下に佇む世にも美しい少女の姿が頭の隅をよぎった。
吉原を守るという彼女もまた、守り神と呼ばれつつ、化物のように思われている。
彼女はどう思って、日々を生きているのだろう?
黄泉がえりによって死人が見えるようになってしまった誠二は、生きていることに実感が持てず、日々怠惰に過ごし、放蕩息子として吉原を遊び歩いていた。ところがある日、妓楼で不思議な少女と出会った。出自から化け物姫と呼ばれ、美少年を従える美しくも高慢な少女・紅羽に目をつけられた誠二は、彼女が解明しようとしている殺人事件の捜査を手伝うように言われて……というお話。
これは面白かった!妖艶で高慢な態度が似合う紅羽が、時折見せる素の姿が可愛いったらない。化け物といわれ、またそれを裏付けるような不思議な鍵を持つ彼女は、人から避けられることに慣れてしまったから、言うなれば自分を守るための高慢さだったんだろうけれど、そのことを知らずに出会った誠二によって、普通の女の子として扱われたことが、きっと彼女の心を動かしてたんだよなあ。
下僕になって働けといいながら、なんだかんだで彼のために動く紅羽が良い子だった。
一方、怠惰であり誠実さのかけらもない誠二の無気力でへらへらした様は、始めこそ鼻につくものの、なぜそうなったかが見えてくると、ね。動かないというか動けない気持ちがわかってしまうから、やるせなくなる。
でも、これまで他の人に、それも好意を持った人が殺されても、必要以上に関心を示さなかった彼が、少しずつ変わって言ったのは、紅羽との出会いがあったからで。形は違えど自分と似た境遇の人を知り、自分にも何か出来るのではと考えて、好いた人の思い出が、彼を動かしていく、その思いが良かったです。
そんな二人が挑む江戸の町を騒がすバラバラ殺人事件は、人の力ではありえない状況が見えたことから、怪異によるものだという噂が飛び交い、妖しさいっぱいの術士とかも出てくるんですが、このあたりの動きも面白かったなあ。居場所を作り上げるために、嘘を重ねた人、人に想いを寄せるあまりに怪異となってしまった人など、事件の裏には人の思いが見えて切ない。
でも、そんな切なさを、不器用な二人が見せてくれる変化で、にっこり微笑むことが出来るようになるんだ。ラストはとてもニヤニヤしちゃいましたね。これはぜひとも続きを読みたいな。
妓楼には鍵の姫が住まう -死人視の男- (f‐Clan文庫)
水瀬 桂子
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