片桐芸術高校には「日本のゴヤ」とも呼ばれた芸術家・赤石沢宗隆の弟子が四人いた。赤石沢宗隆に才能を認められたとされる彼ら彼女らの「赤石沢教室」は、良くも悪くも注目の的だった。
祖父が理事長を務めているという理由で、日本でも数少ない美術科単科の学校へ進んだあゆみは、ある日、友人とともに「赤石沢教室」のアトリエに足を踏み入れることになったが、そこで聞かされたのは、彼女の兄、片桐あきらが自殺した理由は、「赤石沢教室」にあったということで……
「赤石沢教室」を巡る学園騒動ものになるのかと思ったら、ぜんぜん違いましたね。片桐あきらが自殺したのは、赤石沢教室の実験によるものだったことを知った者の復讐物語でした。しかもサスペンスものかと思ったら、本格ミステリーでしたよ。あー、やられた。見事にひっかかった気分でいっぱい。
兄あきらを精神的に追い詰めた実験を知り、赤石沢教室に復讐をするのかと思いきや、人を殺すのは嫌だから、想像だけで赤石沢教室の四人を殺そうと、片桐あゆみが脳内の話し相手「僕」と、計画を煮詰めていくんですが、この過程が面白い。試行錯誤して、ひとつひとつ穴を生めて、心理的なものまで利用して。これなら、という案を考えただけなのに、翌日になったら、その案の通りに亡くなっている。
実は、このあたりで既に見えてるものがあるんですが、それすらミスリードだったりして、いやはや、やってくれるよ。
さらに、別のところで、赤石沢宗隆の過去が語られていくんですが、これがまた怖い。何十年もの間、自分の闇と同じモノを作り上げようとしていた芸術家が、思いついてしまった「創作」は、恐ろしいものでした。本人に悪意はなく、しかも淡々と行われてるところにゾクゾクです。
この「創作」のホラーテイストが、殺人事件のミステリーと絡んでくるからすごい。
真相を知ったときには、思わず、「え?」と思ってしまいましたよ。言われてみれば、おかしなところはあったのに、気づけなかったなあ。さらに二転三転する終盤がすごかったです。特に最後は強烈なまでに怖かった。
いやあ、すばらしい。この人の職人っぷりはもともと好みでしたが、これほどの物語を読ませてくれるとは思いませんでした。「処女作を書いているような気分になった」というのがわかりますね。詰め込み方が半端ないです。
まだまだこの人は引き出しがたくさんありそうだなと思わせてくれました。こうなったら、いっそミステリフロンティアあたりで……とか思ってしまいますね。さてさて、次なる物語は、どんな謎を見せてくれるんでしょうか。楽しみでなりません。
おすすめ。
赤石沢教室の実験
田代 裕彦
Home > ミステリー > [田代裕彦] 赤石沢教室の実験
Trackback:3
- TrackBack URL for this entry
- http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/1767
- Listed below are links to weblogs that reference
- [田代裕彦] 赤石沢教室の実験 from booklines.net
- 赤石沢教室の実験 from 読了本棚 2007-07-22 (日) 15:33
- 日本でも数少ない美術単科の高校である片桐芸術高校に進学したあゆみ。そこでは日本のゴヤと称される赤石沢宗隆の弟子達、いわゆる「赤石沢教室」の面々は注目の的で...
- [雑記]ライトノベルからミステリに殴りこみ from 雲上四季 2007-10-28 (日) 00:21
- 赤石沢教室の実験 (Style-F) 作者: 田代裕彦 出版社/メーカー: 富士見書房 発売日: 2007/07 メディア: 単行本 富士見ミステリー...
- (書評)赤石沢教室の実験 from たこの感想文 2007-12-14 (金) 21:29
- 著者:田代裕彦 赤石沢教室の実験 (Style-F)価格:¥ 1,890(税込)






