「日奈はいつか、昨日のこと、ちゃんと受け止められるようになるんでしょうか?」
どんなに悲しいことであっても、時間がそれを解決してくれるかもしれない。健一は今回ばかりはそれを信じたいと思う。
「わたしは窪塚さんじゃないから、わからないけれど……」
冴子はその質問に悲しい顔をしてから、口を開いた。
「そうであって欲しいと思ってる」
マンションに存在しないはずの13階に足を踏み入れることができた人たちの恋愛物語。今回は、佳奈へ思いを告げた日奈が、新たな道を歩む決意をするお話です。
ああ、終わりが近づいてるんだなあ。読んでるときから何となくそんな印象がありましたが、13階から立ち去る人の姿を見ると、一抹の寂しさを覚えます。居心地のいい雰囲気だから、それが崩れてしまうのは……ね。
でも、日奈について言えば、逃げではなく、前に進むための決意だったから、良かったと思いました。
それにしても健一の変化には驚いたなあ。日奈の気持ちを思って、こんなにも感情をあらわにするとは思わなかった。シーナとのコンビを組んでいたからこそなのかもしれないけれど、友のために怒れる姿が、素直に胸に響きました。
久しぶりに登場した父親との話は、意外なんてもんじゃないものがありましたけど……、個人的には今さらなものを感じたりする。でも、落ち着いて話ができるほど、心の整理ができた今だからこそってことでもあるのかな。このあたりは、ちょっともやもやしましたが、ひとつ決着がついた感じで良かった。
寂しさを覚えた健一が、他の人も13階から出て行ってしまうのではないかと不安に思う中、ちょっとした騒動を起こしてくれたのは、ようやく主人公と遭遇することができた刻也くんの彼女・鈴璃さん。健一との初コンタクトで、ああまで派手なことをしてくれるとは……なんか可哀想になってきた。あのあと、刻也くんと鈴璃さんがどういう会話をしたのかとても気になります。
さて、次で最終巻とのことですが、すんごい引きで終わってますね。いったいどうなってしまうんだろう。っていうか、今回、彼女である千夜子ちゃんがほとんど出てませんでしたが、何となく健一の心が、冴子に寄ってる気がして不安でなりません。がんばれ、千夜子ちゃん……
ROOM NO.1301 #10 管理人はシステマティック? (富士見ミステリー文庫 16-20)
新井 輝
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