「で、話ってなんだ?正月の一日目に呼び出したんだから、よっぽどの事だろ」
「詩葉かあの年賀状について」
雄一郎の表情から、人懐っこい笑みが消えた。
「そうか、そりゃそうだよな。お前のところに届いてないはずがない」
「なんでそう言いきれるんだよ」
「俺のところに来たんだ。なら、お前のところにも届いてる。これは絶対だ」
大学生の「僕」と小学生の志乃ちゃんが繰り広げるミステリーテイストな恋愛物語。今回は、故郷に戻った僕の元に、亡くなったはずの高校時代の彼女から年賀状が届いて、というお話です。
いつもなら、志乃ちゃんに振り回される形で、事件にかかわっていく「僕」が、物語の中心となるのは、なんとも新鮮ですね。故郷に戻ったってこともあって、志乃ちゃんが側にいないんですが、彼は志乃ちゃんがいないほうが、頭がしっかりするのかもしれないと思ったのは、僕だけじゃないはず。
死者からの手紙なんてあるわけがなく、ならば誰がこの手紙を出したのかと、当時の友人や関係者たちを年賀ついでに回っていき、懐かしさを覚えつつ、亡くなった彼女のことで胸を痛める描写がとてもよくて、切ない雰囲気に浸ってたら……、志乃ちゃん、君は時々とってもびっくりさせてくれるよね。
いつもと違う「僕」の様子に、何となく違うものを感じたのは、女の勘ってやつでしょうか。表情こそ変わらないものの、どこか、こう、嫉妬というかなんというか、そういうものを感じて、ちょっとうふふとなってしまいました。
「僕」は過去にかかわる人たちを追い、志乃ちゃんたちは過去の人からの挑戦を受けてと、二手に分かれて、謎を追いかけていくうちに、時にすれ違うところには、もどかしいものを感じたりするんだけれど、「家族」としての温かさを取り戻すために動いた「僕」の姿が、その結果、手を取り合うことができた家族の姿が、とても印象的でした。
「僕」のパートと志乃ちゃんのパートが、雰囲気違いすぎて、いまいちしっくりこなかったのが、個人的には残念ですが、まあ、志乃ちゃんの意外な一面が見えたのでいっか。
とりあえず、志乃ちゃんのくしゃみは、反則級にかわいいことを記しておく。
SHI-NO-シノ-空色の未来図 (富士見ミステリー文庫 76-8)
上月 雨音
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