Home > ライトノベル > [新井輝] ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・ふぉー

[新井輝] ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・ふぉー

催眠術のテレビを見て、おおーって思った綾さんが、本を買ってきた。本を読んだぐらいじゃ……と思いながら、綾に頼まれて、練習台となった健一だが、なんと驚いたことに、あっさりと掛かってしまった。しかも寝ている間に、綾さんが掛けた暗示とは、周囲の人が好きな人に見えるようになるといったもので……

  • 催眠術によって、会う人会う人が千夜子ちゃんに見えてしまうという「僕と綾さんと千人の千夜子ちゃん
  • 考えなしの発言で人を怒らせてしまう咲良が、八雲狭霧と仲良くなる「私とお嬢様とメガネなお仕事
  • 蛍が夫となる圭一郎と遊園地にいく「私と圭一郎と恐怖の館
  • 友人たちとプールにいった鈴璃が、エリと出会った「私とエリさんと嫌でも目立つ自分
  • 刻也が入院した母親のお見舞いに行く「私と有馬君と病院での出会い

という五編からなる短編集です。

ああ、いいなあ。どの話も、淡々と会話をしているだけなのに、とても惹かれるんですよね。のほほんとした空気に浸っているとき、ふいに見せられる心情の変化が、ハッとするほど印象に残ります。この妙が魅力のひとつなんだろうなあ。

一編目の「僕と綾さんと千人の千夜子ちゃん」はいいなあ。周囲の人が全員自分の好きな人に見えるという暗示をかけられたとき、それが千夜子ちゃんだったことに嬉しくなりました。っていうか、本人の自信のなさには、どうかと思ったけど、繋がれた手の温かさが伝わってくるような千夜子ちゃんとのやり取りが良かったです。

面白かったのは「私と圭一郎と恐怖の館」でしょうか。実は怖がりだった蛍が、そのことを言えずにお化け屋敷に入って、というところに、蛍の意外な姿を見た気がして、ニヤニヤ。でもこの強気っぷりがいいですね。
夫となる圭一郎は、なんともつかみ所のない人だなあ。あらゆることをソツなくこなす余裕っぷりが、いっそ気持ちいいぐらいですが、なんとなくこの人の雰囲気は健一に似てる気がする。素敵なカップルになりそうな予感を思わせるラストが素敵でした。

一番好きなお話は「私と有馬君と病院での出会い」かな。お見舞いにいった先でのやり取りに、息子を思う母親の気持ちが伝わってきて……。リンゴひとつで、こんなに感情を揺さぶられるとは思わなかった。でも、それに気づかないから、刻也は刻也なんですよね。昔に比べれば、良くなってると思うし、友人話を聞いたお母さんもそのことはわかってるでしょうから、これからもきっと、温かくみ守ってくれるんだろうなあ。
刻也と冴子の過去のお話にも、ちょっと触れられてましたね。いろいろと重そうなものを感じさせてくれますが、このあたりは、いずれ語られるのかしら。

ただ、一編目をのぞくと、ほとんど同じテンポなので、さすがにちょっと物足りなくはあったかな。一日一編ずつ読めばよかったかもしれない。とはいえ、普段は見えない脇役たちの複雑な内面が見えるお話は、とても興味深かったので、このあたりが本編にどう繋がってくるのか、気になるところです。

それにしても、あとがきの面白さは異常。

ROOM NO.1301しょーとすとーりーず・ふぉー (富士見ミステリー文庫 16-19) - 新井 輝

ROOM NO.1301しょーとすとーりーず・ふぉー
新井 輝

富士見書房(文庫)
Amazon | bk1


関連エントリー
[新井輝] [ROOM NO.1301シリーズ感想一覧] [富士見ミステリー文庫] [ライトノベル]

Home > ライトノベル > [新井輝] ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・ふぉー

Trackback:1

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/2184
Listed below are links to weblogs that reference
[新井輝] ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・ふぉー from booklines.net
ROOM NO.1。301しょーとすとーりーず・ふぉー from 俺萌 2008-02-19 (火) 00:50
最近のラノベは本編でなくサイドストーリーで儲けるのか? このシリーズ、はじめはエロに期待してたのが正直な所だけど、それでも有馬ビル13階の存在が醸し...

Comment:0

Comment Form
Remember personal info

Home > ライトノベル > [新井輝] ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・ふぉー

Search
お気に入り

異形の王子と毒を吐く少女の恋の物語

4048700588

他人を寄せつけぬ毒を載せた言葉を吐いていた少女が、王子と伝承と出会ったことで、信じる思いを紡ぐようになる、その祈るような思いに涙しました。懐かしき人たちとの再会もまた素敵。→感想


それは血の繋がらない家族の物語。

4048700480

大きな山や谷があるようなお話しではないんだけれど、クセのある七人のきょうだいが共に暮らすその家には、じんわり温かい家庭がありました。それぞれ抱えているものはあるけれど、この家族ならきっと支え合いながら乗り越えてくれると信じてる→感想


それは「夢利き」が語る人の夢の物語。

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶 多崎礼

最高傑作級!辛くとも好きな人と共に歩める幸せ、あるいは人の夢に乗る幸せと切なさ。独立しながら、リンクする物語は、温かさに、人を想う気持ちに満ちあふれて、胸が熱くなる。人が人と出会うことの素晴らしさは、時に眩しくもあり、切なくもなるんだなと思いました。→感想


江戸時代。新たな暦を作る偉業を成し遂げた渋川春海の物語。

天地明察

最高傑作!碁打ちであり、算術家でもある男が、打ちのめされ挫折して挫折して挫折して、でも夢を忘れられず、立ち向かう姿に、どれほど興奮させられたか、泣かされたことか!さりげなく描かれる恋も素晴らしく、読み終わりたくないとこれほど思った作品はありません。 → 感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下

なかのひと

Page Top