「生意気」
精霊に対価を捧げ、異能の力を手に入れた契約者。その契約者として比類なき力を持つヴァレンシュタイン家のお嬢様・エルミナと、執事・マルクを中心とする騒動を描くシリーズの第八弾。今回は、こっそりと家を出たエルミナとカナメを追って、マルクが列車に乗り込んだら、四強を狙う<鉄人>が現れて、というお話。
まったくマルクってやつは……とため息つきたくなることもありますが、ひとりの男をめぐっているふたりの女の子の列車の旅模様がとても素敵。恋敵ではあるんだけれども、まず友達なんだなあと思うやり取りに、微笑みたくなります。まったく不器用な二人なんだから。でも、まさかそこまで初心とは思いませんでしたけどね。
一方のマルクは、エルミナを思っていたのに、カナメを意識するようになってから、彼女のいじらしさを発見していって揺れ始めるから面白い。列車から突き落とされそうになったあと、いじらしいと思う彼はどうかしてると思うけどね!この恋の三角関係は、「婚約者」の存在が出てくると、さらに面白いことになりそう……と思ってたのに、揺りかごのせいで切なくなるかも。ううむ、なんとかならないかなあ。
さて、エルミナのプライベート問題が語られながらも、焦点となったのは、お屋敷料理人セリアの過去と復讐のお話でした。かつて共に旅をした少年の死が、彼女の喪失となり、契約者となったならば、その仇の存在を知ったら、そりゃ復讐に走るよなあ。でも、エルミナたちが乗っている列車での戦いというのは、<魔弾>からすると大いにハンデで、さらには彼女本来の優しさから、思わぬピンチを招いてしまう展開には、歯がゆいものがありました。
そこで動くマルクはやっぱり格好いいよ。真顔で「仲間」といえる人は素敵です。アルバがいなかったら、セリアも惚れてしまうのではないかと心配するぐらい。彼だけでなく、ジェノバもまたセリアのために涙して、ああ屋敷の住人はとてもいい関係だなと思う次第です。
それにしても、マルクがカナメを思う人の存在に嫉妬したりして、おやおやと思ってたら、ラストでとんでもない出来事が……そういえば、途中で触れてたけど意識がスルーしてた。どうなるんだろう。
影執事マルクの道行き (富士見ファンタジア文庫)
手島 史詞
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