「それは、我が主の望みではございません」
「主の望みかどうかではない。お前が望めばそれを与えてやれるのだ、と言っている」
それでも、マルクは首を横に振った。
「それでは、エルミナは笑ってくれません」
精霊に対価を捧げ、異能の力を手に入れた契約者。その契約者として比類なき力を持つヴァレンシュタイン家のお嬢様・エルミナと、執事・マルクを中心とする騒動を描くシリーズの第七弾。今回は、ドミニクの過去を描きつつ、マルクの揺れる想いが描かれるお話です。
とてもニヤニヤさせられるお話でした。
エルミナとあんなことがあったおかげで、これまでになく意識してしまうけれど、主従である以上、傍にいられても触れられないという距離感に、溜息ついてる姿に頬が緩んでしまいます。しかも、エルミナだけでなく、カナメにまで反応しちゃうから、たまりません!
マルクだけでなく、女の子たちも同じように溜息ついてるから、ニヤニヤですよ。こちらはライバルだとわかっているから、なおさらなのかしら。それとも、鈍い男への溜息なのかしら。恋わずらいって、本人は大変だろうけれど、周囲から見てる分には、楽しいことのこのうえないですね(ひどい)。
さて、今回はそんなマルクたちにの前に現れたのは、かつてエルミナの母ヴィオラの傍にいたペイン。ドミニクへの恨みを持って近づいてきて、彼の周辺を荒らそうとする様は、過去に何があったのかと思わせるものがありますが、その過去のエピソードが時折挿入されてきて、そこでのヴィオラと少年の話が、すっごい微笑ましく、すっごい切ないんです。ああ、この思いがあったからこそ、ドミニクは……いつも笑顔が絶えないけれど、心の奥では何を考えているか分からないドミニクが、初めて見せた涙が、とても印象的でした。
ヴィオラと同じ道を、娘であるエルミナたちも辿ってはいますが、きっと何か方法があると、そう信じてる。ペインが最後に告げた言葉は何なのか気になるところですねぇ。
ま、そんなことよりも、カナメの宣戦布告の方が衝撃的でしたけどね!ああ、楽しい。
それにしても、お兄ちゃんは、妹のためならどこまでも強くなれるんだなー。
影執事マルクの秘密 (富士見ファンタジア文庫)
手島 史詞
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