「わかった。私が文字を教えてやろう」
「面倒くせえ」
「私が教えなくても、どうせ学ばなければならないぞ」
それに、とリシェルはずらりとそびえたつ書棚を振り返る。
「歴史は……私だってそれほど知っているわけではないが、ガルガンラウムやルードに勝るとも劣らない英雄や勇者、偉人だらけだ」
ジグウォルに向き直り、黒い瞳でまっすぐ見据えた。
「誰かから聞くのではなく、おまえ自身の手で、目で、知ってみたくはないか?」
祈りと印によって、空に輝く星々の力の恩恵を星導といい、星導の行使に長けた者を星導師と言う。これは、書物を焚書する聖堂の教えに反発し、外法となった星導師の少年・ジグウォルと「万巻の書」と呼ばれる精霊レジィナが、戦によってあちこちに散らばった本を探す旅に出る物語。
これは面白かった。出会った本を開くときのワクワク感とか、とてもわかるなあ。ちょっと乱暴だったり、ちょっぴりエッチだったりするジグウォルだけど、本が好きってのが伝わってくるシーンがとても好きです。
そんなジグウォルの側にいるレジィナもまた書物を愛する人ですが、口が悪いおかげで、ジグウォルといると、いっつも憎まれ口たたき合ってて楽しいんだ。この人の話芸はいつだって僕のツボを突いてくれる。
レジィナがヒロインかと思ったら、もうひとり敵対する聖堂に所属する騎士リシェルも、なんだかいい感じだから困ります。命の恩人にして幼なじみだから、敵対しながらも感情は複雑で……というやり取りが、とてもいい。
ただ、今のところ三角になりきってないので、ヒロイン方面はちょっと物足りないけど。
焚書をする聖堂に立ち向かうために星導師の奥義書「五賢七書」を求める旅はまだ続くみたいですが、今回のジグウォルの力を知ったら、聖堂もこれまでのような追いかけ方では収まらない気がします。あの強さは異常すぎるけど……どうやってそんな力を入れたかが描かれてないので、ちょっともやもやしたりする。これは師匠の出番を待つしかないのだろうか。
まあ、ジグウォルはこれまでどおりいくんだろうけど、もうひとりの幼なじみのセロがいい具合にクールなので、場合によってはピンチになるかもしれないなあ。知り合いだろうが何だろうが、利用することを躊躇する感じはなさそうだし。
それ以上に、リシェルがどう動いてくるのか気になるので、ぜひとも続きをお願いしたいところです。
漂う書庫のヴェルテ・テラ (富士見ファンタジア文庫 か 6-2-1)
川口 士
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