「あのさ。もしかして……わたし、だめな巫女なのかな」
『これはまた唐突ですね』
「だって……巫女は浮遊大陸全体のために命をかけて結界を張るものでしょ?それはわかるの。でもその中に、一番守りたかった人がいなくなったら……どうすればいいの」
凍てついた氷海の上空に浮遊する大陸オービエ・クレア。巫女の祈りによって、触れた生物を死滅させる幽幻種という存在から守られている大陸を舞台に、巫女となったユミィと幼なじみでありユミィの護衛になることを目指すシェルティスが繰り広げるファンタジーです。
これは面白かった。
とある事情から、ユミィの元から追放されたシェルティスの様には、はじめははっきりしない態度にもどかしさを感じていたんだけど(っていうか、あれだけ内心をぽろぽろ漏らすのはどうかと!)、機械いじりが好きな明るい女の子エリエと、妹のような存在のユトと過ごすうちに、だんだんと目標を定めていく展開は良かったです。やっぱり人が力を使うのって、守りたいものがあるからなんですよね。
単純かもしれないけれど、ストレートな心情には、グッとくるものがありました。
シェルティスとユミィが迷っている内に、幽幻種の怪しい動きが始まり、わずかな隙を突かれて戦いが始まるんですが、このタイムリミットが指定されてからの展開は、面白かったなあ。巫女や千年獅、兵士たちが、死ぬことではなく、守り抜く覚悟を決めて戦いに挑む姿が熱かったです。
それにしても、戦いを終えた後の再会シーンは……やるせないものがあるなあ。「魔笛」によって阻まれる温もりは、言いようのない拒絶を感じたと思うけど、それでも二人の間には、言葉で思いが届いてくれて、良かったです。いつかもう一度、たどり着いてくれたらと、そう思いました。
個人的には、もうひとりのヒロイン(?)であるエリエも好きなので、何かいい具合に三角とかできてくれないかしらと思ったりするんだけど、さて、どうなるかしら?
氷結鏡界のエデン 楽園幻想 (富士見ファンタジア文庫)
細音 啓
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