それは夜色の名詠式と名付けられた詠だった。
……母さん、アーマ。
……ありがとう。そして、僕は信じて良いんだよね。
自分の学んできた名詠式が、大切な人を助けられるということを。
触媒と詩を用いる召喚魔法・名詠式。その名詠式を学ぶ学園で、異色の夜色名詠を学ぼうとするネイトと、目標が見つからないクルーエルが出会って、成長していくお話の第十弾。今回は、名詠式の秘密と世界の成り立ちが明かされて、根幹に関わり姿を消したクルーエルを、エイトが迎えにいくシリーズ最終巻です。
ああ、素晴らしい。人の思いに心が揺さぶられるとは、まさにこのこと。読んでる間に、じわっとくることが何度あったことか。温かくなったことが何度あったことか。
クルーエルを迎えにいくという決意を胸にするネイトの話もいいけれど、共に行動するエイダやレフィスの思いもグッとくる。迷うことはたくさんあるけれど、人との出会いに支えられながら、思いを自覚して強くなるやり取りが素敵です。戦いが相手をよりよく知るための会話に見えて……いいですね。
アルヴィルとテシエラについても、彼らもまた出会いから信頼を知り、支え合ってきたことを思うと、一概に敵とは言えない思いが生まれてくる。
戦いを経て、ネイトがついにシャオと、そしてミクヴェクスと出会ってからの話は、ほんとね、やばいなあと思ってたんだけど、アマリリスの詠で決壊した。
すべての目覚める子供たち。
ここに繋がる詠の美しさと、澄んだ思いと、みなが願う心を感じたら、涙が止まらなかったです。
ああ、ほんとよかった。
シリーズを読み始めたときは、面白いけど、どこかきれいすぎて物足りない感じがあったんですが、読み進めるにつれて人の思いに引き込まれてしまいました。愛すべき人でいっぱいです。
エピローグはちょっと長いかなと思いつつ、終わってしまう寂しさがあったので、もっと長くても……という矛盾した気持ちになる。そんなシリーズでした。
黄昏色の詠使いX 夜明け色の詠使い (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-10 黄昏色の詠使い 10)
細音 啓
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