「どうしてその名で呼ぶの?<エパティーク>はあの日、お母様たちと共に死んだのよ。私の名はアマポーラ。あなたがくれた名前。エレンが呼んでくれる名前。あなたがどんな思いでこう呼んでいたのかなんて、もういいの。どんな場所に咲いたって、雛罌粟は美しい花だもの」
エッセウーナに制圧され、囚われの身となったオクトスの王女エパティークは、エッセウーナの第二王子テオバルトに連れられて、死地へと向かう旅に出ることに……というお話。
これは素晴らしい。
虜囚の姫と疎まれる第二王子の旅路は、どちらも今の境遇について、責任展開を図っているので、どうにも好きになれなかったんですが、これがだんだんと変わっていくんですよね。
大切に守れてきたエパティークが、現実を知り、辛さを知り、寂しさを知り。そして身分を隠すために旅のお供となった奴隷の子エレンによって、人の温かさを知っていくところにじんわり。
一方、単なる取引の道具としか見ていなかったはずのエパティークが、少しずつ変わっていく様子をみて、いつしか気にかけていくテオバルト……という心の動きが、とてもきゅんとする。
彼の孤独もまた苦しいものだけど、自分が味わった嫌悪感を、他人に与えてることに気づいて変わっていくところが、とても印象に残りました。
危険な旅路で療養しなければならない怪我を負ったとき、三人で過ごした穏やかな時間が、いつまでも続いてくれたらと思ったのは僕だけじゃないはず。生贄により竜を呼び出すという伝説を考えたら、なおさらですよね。
それだけに、「竜」話が見えてしまうところは、ちょっとご都合かなと思わなくもなかったけど、その後の展開が、ずきっと心に痛く、でも見えなかった温かさを感じさせてくれてよかったです。
最後はとても切なかったけど、きっといつか……と願いたくなりましたね。ほんと素敵でした。一冊でまとまっているので、切ないけど、温かい読後感を味わいたい人は、ぜひぜひ手にとってみてください。オススメ。
花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫)
淡路 帆希
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