「いや、そんなことよりもずっと昔から、私は月下の裏切り者さ。それこそ、転化したそのときから」
だがな、とカーサは優しく続ける。
「そんな私でも、裏切りたくないものはある」
「な、なに?」
「決まってるだろ。血族さ。自分自身さ」
特区奪還に向けての Xデーが近づくころ、九龍の血統もまた動き出して……というクライマックス直前のお話です。
いやあ、すごかった!
はじめにカーサが九龍の血統へ足を踏み入れていった過程が描かれるんですが、これは……仕方ないよなあ。混血児として生きてきた彼女の寂しさが導いてしまったんじゃねぇ。血には逆らえないと言うことか。
思わず理解してしまうのは、これまでの長編・短編を通じて、カーサが背負っていたものの重さを知ってしまっているからでしょうね。彼女も主役のひとりだと思いました。
一方、ミミコ方面では、着々と特区奪還に向けて戦力が集結し始めていて。月下のものたちにも「乙女」への期待が伺えますね。
それでも彼女が待っているのは、ただひとりの吸血鬼で。
うっすらと感じる寂しさと、たった一言に込められた思いの深さに、やられるものがあったなあ。
ともあれXデー間近と言うところで、一転して九龍の血統が動き出すところにはやられた!と思ったんですが……きたか、ついにきたか、ジロー!「銀刀」を持つ彼の姿に、どれほど興奮したことか!
こんなに気分が高揚するとは、思わなかったなあ。いつの間にやら手が汗ばんでました。
また彼が放った一言が泣かせてくれるんだ。
たしかにこれは世界の命運をかけた戦いかもしれない。でも、それ以上に、ジローとミミコにとってみたら、家族のお話でもあるんですよね。忘れなかったジローに拍手したくなりました。
さあ、クライマックス間近です。もう役者はそろったと言っていいでしょう。次なる最終巻でどういう結末が待っているのか、楽しみで楽しみでなりません。
BLACK BLOOD BROTHERS10 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 銀刀出陣― (富士見ファンタジア文庫)
あざの 耕平
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