『お前が小娘と出会ったのは、決して誰かがそうと決めたわけではない。ただ一瞬のすれ違い、お互いがそこで振り返らなければ、そこで別れて終わりだった。幾度となく繰り返された歴史の一つ。本当に、その程度の些細な交わりだったはず。だが』
ゆっくりと、贈る言葉を選ぶような余韻を残してそれは続いた。
『何千何億回と繰り返された歴史の中、だがその一瞬の交差で終わらず、お前たちは互いに振り返った。それこそが何にも代えがたい奇跡であることを最後まで信じぬけ』
触媒と詩を用いる召喚魔法・名詠式。その名詠式を学ぶ学園で、異色の夜色名詠を学ぼうとするネイトと、目標が見つからないクルーエルが出会って、成長していくお話の第七弾。今回は、どんな名詠式にも、何度でも使用可能な触媒が発表されるという凱旋都市エンジュに、ネイトたちが向かうお話です。
おお、面白くなってきた!
正直なところ、そろそろ読むのやめようかなと思っていたのは、物語の雰囲気はきれいだと思うけど、いまいち、こう、ノリきれないものがあったからなんですが、新章になって舞台が変わり、二人の関係もちょっと変わってきて、さらには名詠式の行方も今までとは違ってきて、読む手が止まりませんでした。
表向きは、名詠校の生徒による模擬決闘の大会を見学しに行く、という用事で向かうわけですが、ところどころで見せてくれるネイトとクルーエルの、今までとちょっと違う描写がいいですよね。特に、みんなにからかわれることもあって、ちょっと意識しちゃうクルーエルの様子ににやり。
自分の思いが何なのか気づかないネイトではありますが、クルーエルを守りたいという思いを強くしていくところが、今回とても印象に残ってます。
今回新たにできたキャラも良かったなあ。エンジュで出会ったジール名詠学舎のヘレンとレフィスの関係は、どこかクルーエルとネイトっぽいものがあってにやりとしちゃう。そういえば、クルーエルとネイトの関係をちょっと羨ましく思ってるエイダの恋らしきものも、見逃せなくなりそう。
とまあ、男の子女の子たちのやり取りを微笑ましく思いながらも、アーマの思わせぶりな態度(毎回毎回何か告げようとする度に邪魔が入るってどうよ!)や、アマリリスの気まぐれな優しさに不安を覚えていたら、いきなり大ピンチを迎えて、それを切り抜けたと思ったら、実は……といった展開は、ほんと面白かった。ここでクルーエルが奏でた<讃来歌>にしびれるしびれる。
だからこそ、クルーエルを襲うであろう出来事がつらくて。今のところ、ネイトしか気づいてないらしいけれど、このままだと、約束が果たされなくなりそうで……。
クルーエルが空白名詠を使うとか、五色の名詠が消えるとか、謎めいた言葉がいろいろ飛び交っているだけに、一同が集まった場所で何がおきるのか、気になってしょうがないですね。
黄昏色の詠使いVII 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-7 黄昏色の詠使い 7)
細音 啓
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