「テレス」
「え?」
振り返りかけた彼女の動きを、どこまでも平坦な娘の声が制した。
「<女王>を宿す者」
娘はガラス玉の様に感情を含まぬ冷たい瞳で言ってきた。
「少佐の命により、お前を回収する」
存在するだけで周囲の物理法則を捻じ曲げてしまうという異界の生命体ディスパレイトを用いて、よろず揉め事を解決するランドリュース興信所に就職したエニーネが、のんきな所長トルクと、可愛いけどディスパレイトおたくなテレスを相手に、日夜ドタバタを繰り広げるお話の第二弾。
今回は、落雷で停電したときの騒動や、希少価値の高いディスパレイトを売買するものたちを捜査するお話、エニーネが事故にあり、例の人がテレスたちに手を伸ばし始めて、ついにエニーネがトルクの過去を知っていくお話が収録されています。
いやあ、初っ端の「停電と文明のこと。」から笑わせてくれるなあ。こちらの世界でディスパレイトが生きていくのは、並大抵のことではない。という状態で、多くのディスパレイトを飼ってるランドリュース興信所が停電になったら、どんな騒動が待ち受けているか想像できますよね。まさか、自転車漕ぎで発電させるとは思わなかったけど。
どんなときでも、何となく楽しい空気を作ってくれちゃうエニーネたちの空気は、ほんと好きだ。
ディスパレイト売買に関する捜査をする「生命と許可のこと」で楽しかったのは、なんといっても、トルクとエニーネが夫婦役で囮捜査するところでしょう。好きなのかどうなのかはっきりしないと言いながら、何となく意識しちゃって、「奥さん」と呼ばれるとギクシャクしちゃうエニーネに、ニヤニヤしちゃう。
このあたりで、トルクの過去がちらりと見え始めてくるんですが、次からの三篇(前後編を入れれば四編)で、ついに敵の手が見えてくるからドキドキです。過去編であるディスパレイト!コンプ(→感想)を読んでいるので、誰が何を狙っているかはわかってるんですが、この直前にエニーネが事故にあったことが、よりによってテレスに悪く響いてくるから、早く、早く助けに!と手に汗握るものがありました。
テレスに対するトルクの思いの複雑さに、やるせないものを感じたりもしましたが、馴れ合いではなく頼りあう関係を築いていたギルと、悔いていたトルクを優しく支えるエニーナの思いが素敵でした。
いやあ、面白かった。
真実を知って傷ついたテレスに対して、まっすぐな言葉を投げかけるエニーナは、ほんといいな。彼女とトルクの仲は、はたしてどうなったのかとか、女王の話とか、いろいろ気になることがあっただけに、もうちょっと、続いて欲しかったですね。これで終わるのは、とても残念ですが、次のお話に期待したいと思います。
ディスパレイト!2 陰謀とその残骸のこと
榊 一郎
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