「でもよお。結局はフォーチュン・ドロップに全部預けることになるんだろ?だったら信じようぜ。俺たちの密造酒をよ」
「……のるか、反るか、か」
ふと、ギルバートの背筋に冷たい電流が走った。憤りが溶け、頬が歪む。
「そうだな。結局この仕事は賭事なんだ」
ギャングだった父の借金はあまりにも膨大。弟と妹を抱え途方に暮れていたフランシスの元にやってきた自称不老長寿の老人リーは、密造酒作りを提案して……都会にあこがれてやってきた田舎ものガンマンと、普段はクールだけど賭事に目がない会計士、バカ親のせいで苦労した姉弟たちが、ギャングスター街道を突き進むことになるお話です。
「Dクラッカーズ」や「Black Blood Brothers
」シリーズを手がけるあざの耕平さんのデビュー作です。名前が漢字で字野耕平になってますね。禁酒法時代のシカゴを舞台にした物語なんですが、面白かった。
三者三様のキャラクタが、それぞれいい感じに希望を持った後、落ちていく様がユーモアにあふれてて、ついつい笑ってしまいます。まあ、会計士・ギルやガンマン・ジョバンニはある意味自業自得だけど、フランシスは可愛そうだよなあと思いつつ、あれだけ暴れられると……いえいえ、なんでもありません。
それまで、まるっきりかかわり合いのない三人が、神仙酒という密造酒作りのために、集まってくる展開が面白いんだ。借金返済、一旗揚げる等、それぞれの理由がこういう形で絡んでくるとはなあ。
どちらかといえば、ビジネス関係だったはずなのに、だんだんと仲間意識が生まれてくるところがとても好きでした。何気にジョバンニって面倒見いいよね。
町を牛耳るギャングの隙をつく作戦は、初めこそうまくいくものの、なまじ出来が良かったがために目を付けられ初めて、気づけば追いつめられていくんですが、裏で何者かが動いてると思ったら意外なところに伏兵がいて驚くばかり。
今までのようなお遊びではなく、命の危険が迫るサスペンス展開にハラドキでしたが、神仙酒の効用とそれぞれの特技を生かして切り抜けていく展開が熱かったです。フランシスが飲むのを待ちに待ったのは僕だけじゃないはず。
いやあ、面白かった。
欲を言うなら、もうちょっと恋愛要素があってくれれば……ってところかな。せっかく可愛いというか格好いい女の子がいたんだから、もうちょっと、こう、ね?と思った。
神仙酒コンチェルト―ブートレガーズ (富士見ファンタジア文庫)
字野 耕平
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