ベルセリオとミルガの国境を走る列車の中で、ジネットはためいきをついた。あれからもう二年が経とうとしている。だが、いまだになんら手がかりをつかめていない。先行きの見えない旅路に、気分が沈んでいたとき、食堂車両に幼い少年に目がいった。どこかで見たことがある気がして何とはなしに見ていたが、二年前に記憶を失くしたという少年の言葉に、ジネットは驚愕した。
まさか……この子が……
魔法書によって不死者となったものたちが、『ひとつめの嘘(ソルトレージュ)』 を求めるファンタジーの第四弾。今回は、リュカを捜し求めて二年の月日が流れ、というところから物語が始まるんですが、前作とは違って、いろいろなものが見えてきて、かつ動きがたっぷりだったので、面白かったです。いったい何がおきているのか、次に何が起こるのかと、引き込まれるばかり。
中でも印象深かったのは、ジネットの心の動きかな。リュカと思わしき人を見つけたのにもかかわらず、言い出せない。言い出せないからこそ気づいてしまった思いが、なんともやるせない。
かつての敵を目の前にして、戸惑いを覚え、あまつさえ、力を貸すところに、彼女にとってリュカがどれほどの存在であったかが伝わってきます。
ジネットにとって、天敵ともいえる王城の女王の存在も、少女でありながら、その鋭さには目を見張るものがありましたが、「妖精」の意味を知りながら従えさせるには、情が深すぎるんですよね。いつかはとわかっていながらも、側にいてほしいと思ってしまった少女の思いに胸が痛みます。
敵であったクリストフにすら切ない物語があったりして、温かさとそれを失うかもしれないという不安要素が、あらゆるところに見えていましたが、まさかこういう結末を迎えるとは……。
失ったものの大きさを考えると、ジネットの心にどれほどの傷を負わせるのかわかりませんが、逆に手に入れたものもあるわけで、このあたり、どう心の整理をつけていくのかしら。
あとがきによると、どうやら次あたりで最終巻っぽい。ソルトレージュを求めた旅が、どういう終わりを迎えていくのか、楽しみですね。
銀月のソルトレージュ 4 (4)
枯野 瑛
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