アリスの兄の計画は巧妙だった。アリスを守るために、他の犠牲を考えなかったのだろう。命を懸けた行動は、たしかに彼女を安全なところへと押しやったが、犠牲は大きかった。取り乱したアリス、呆然とする聖一を目の当たりにした冬湖は、ひとつの決心をした。アウターシンガーには、もうひとつ上の段階がある。そこへ辿りつければきっと……。そして彼女は言った。
「ごめんなさい。冬湖は雫との約束を守れません。ばいばい……」
一チーム三人のプレイヤで 256隻の艦隊を操り戦う戦略「ゲーム」。圧倒的力量で世界を制した兄の恭介を追うために、雫が冬湖、智香という仲間を引き連れて、世界へと躍り出たら、ゲームよりもはるかに深刻な事情が待ち受けていて、というシリーズの最終巻です。
いやあ、面白かった。雫という女の子の魅力が、前面に出てましたね。失意から無気力に陥ったものの、仲間の励ましや、協力してくれた人たちの温かさ、さらに巻き込んでしまった人への責任感から、立ち直っていく姿が素敵でした。特に吹っ切ってからの強引な行動は素晴らしい。思わず笑ってしまいましたが、無茶苦茶でありながらも、相手を思う気持ちが伝わってくるんですよね。こういう人の言葉だからこそ、人は動かされるんだろうなと思いました。
何も考えていないような智香が、またすごいことやってくれるんですよね。さりげない仲間の後押しが、またひとつ、気持ちを盛り上げてくれます。
冬湖の気持ちもわかるけれど、それ以上に、彼女を心配する人たちがいて。だからこそ、みなが力を合わせることができて。
冬湖の側についた兄・恭介との戦いも熱いものがありましたが、それ以上に、冬湖を説得すべく出向いてからのゲームにしびれました。圧倒的強さを手に入れた冬湖を相手に、そこまで冷静でいられるなんて!仲間だったからこそ、親愛している人だからこそ、本気で、全力で相手をする姿に、思わず涙が出てくる。
ここで終わっても十分なものがありましたが、さらにさらに盛り上げてくれるとは、やってくれますね。絶望が見える中、世界中が、彼女の言葉に奮起した展開に鳥肌もんです。
それだけに、あそこであっさり終わってしまうのは、ちょっと物足りないものがあるんですが、仲間の素晴らしさを、魅せてくれるお話に大満足。
これで終わってしまうとはさびしい限りですが、次なるお話で、また素敵なお話を期待してます。
クジラのソラ(4)
瀬尾 つかさ
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