複数の高官暗殺、大型兵器の都市流入、広範囲にわたる襲撃、ウィルスによる電子テロ計画、その全てが二十四時間以内に決行される可能性がある ― 情報を入手したMSS長官ヘルガは、対処すべく動き出したが、政治家どもの縄張り争いから対処が遅れ始めたとき、ヘルガ自身が襲われ、さらに内務大臣が暗殺されて……
複数の犯罪が行われようとしている中、MSSも狙われて……というところから、「24」のように、1時間ごとに展開が進行していくお話です。
いやあ、面白い。
いきなりヘルガが狙われるところからして、後手に回っているんですが、致命的なダメージを避けて挽回しようと思ったら、先の先へ行かれているという展開には、引き込まれるばかり。
さらに、殺された大臣の残した「リスト」という言葉が謎を呼ぶ中、ウィルスによるタイムリミットまで発生するんですから、読む手が止まらないったらないです。
追いつけそうで追いつけないあたりには、もどかしいものを感じますが、内通者がいるのでは?と思い当たってからがまた面白くて。なんせ、疑いの目のひとつに、冬真が入ってしまうんですから。
おかげで、鳳たちと冬真の間の空気が、いつもと違う感じになったのは、興味深いところでした。信じている、でも、任務に背くわけにはいかないと、揺れる鳳の心情が印象的でした。いつの間にやら、雛まで冬真に懐いてるだけに、亀裂には心痛むものがありました。
鳳だけでなく、冬真にも、今までに無い心情が見えたのは、良かったなあ。ただ守られるだけの存在であり、命をかけて戦っている少女達に気後れを覚えていて、疑いの目を向けられる立場となったことで、鳳へ心痛を与えてしまったことに落ち込む姿には、弱さしか見えませんでしたが、鳳の気づかいと水月無の協力から、立ち向かうことを選んだところに成長を感じました。さりげない恋愛要素と、今までなかった友情が芽生え始めたところは、今後も楽しみなところですね。
命を懸けて戦うものたちを邪魔するのが、同じ国の人間であるというところには、こんなときでも政治的立場かと、イラ立ちを覚えますが、そんな中、常に冷静に前を向く鳳は格好良かったなあ。
「あたくしたちは、もはや疑ってもいないのですわ。この体を。決して失墜しない羽を。全てのスタッフを。戦線の仲間を。疑えば飛ぶことなどできません。それが、あたくしたちの弱さであり、強さなのです」
死を目の前にした少女に、仲間への信頼をこれほど見せられてしまったら、行動するしかないですよね。
絶体絶命から抜け出すきっかけが、彼であったところに、にやりとさせられますが、お調子者にしか思えなかった水無月の背負ったものと、ボスへの思いに切ない限り。
今回もまた最後に逃すのか……と思ったときに、見せてくれた特甲児童の機転には思わず、ガッツポーズ!例のアレはまだ動いてるだろうし、何よりミリオポリスの中にも、巣くっている闇があることがわかってきたので、まだまだ予断を許しませんが、それでもきっと彼女たちがいれば……、そう思わせてくれる物語でした。
次はどんな展開を見せてくれるのか、とても楽しみ。
スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
冲方 丁
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