自らが作り上げたアルティメットドール、通称UDのシュナイダーに、一刻も早くパーツを届けなければならないというのに、よりによって輸送艦は超オンボロで、予定は遅れに遅れ、あまりのことにヘキサが、艦長へ苛立ちをぶつけた矢先に、敵艦に襲われてしまった。もはやこれまでかと思ったとき、目の前にUDの廃棄所が!一体でも動けばと、ヘキサは試行錯誤を繰り返したら、旧式の量産型ヒューマノイドが動き出し……
人間同士の戦争に利用していたヒューマノイド型の自律機動兵器が、自ら思考制御プログラムを解き放ち、やがて人間とUDの戦争へと発展した時代のお話です。
最新型のUDに襲われたときに、立ち上がったのが、旧式の量産型UDで……という感じに物語が始まっていくんですが、どうも初めが面白くなくて。笑わそうみたいなノリがどうにも合わないんですよ。笑いの角度が合うといけるのかもしれませんが、僕には、ああ、すべってる、という空気に思えてしまい、読むのが痛々しかったです。
なもんで、途中で読むのやめようかと思ってしまいましたが……、読み続けてよかった。
技師者ヘキサと、輸送機の艦長アインツヴァーと大尉のルイ、さらに、ひょんなのことから起動してしまった量産型ナンブと共に、シュナイダーへパーツを届けにいくんですが、それぞれの内面の見せ方がうまいんだ。特に量産型のナンブの過去話は、泣けるものがありました。彼の空回りするほどの気合と根性は、ここからきていたのかと思ってしまったら、もうナンブの虜。
初めは量産型なんてと、疎んでいたヘキサが、彼の心意気に触れて、分かり合えていく気持ちがわかりますね。
ついにシュナイダーがいる町へたどり着いたところからの展開は、天才技術者とはいえ、まだ14歳であるヘキサには、あまりにも重いものがありましたが、そんな彼女を守るべくナンブの闘いが、熱かった。
勝てる可能性なんてまるでない最新型を相手に、ボロボロにされ、機能さえも停止しそうなのに、心だけは折れずに、立ち上がり続ける姿は、燃えないわけにいかない。
ナンブだけじゃなく、普段はヘラヘラしてた艦長アインツヴァーの決め台詞も、傷ついた心から、思考停止に陥っていたヘキサを、立ち直らせたルイの言葉も、心打たれるばかり。なんだなんだ、全員に見せ場があるじゃないか!
いろいろと、ご都合すぎるところもあるんですが(いくらなんでも気合いで乗り越えすぎ)、気持ちだけは負けない物語でした。いやあ、さすが、量産型はダテじゃないですね。初めさえ乗り越えてしまえば、面白かったです。今後も熱き物語を書いてくれそうな作家として期待しようっと。
第19回ファンタジア長編小説大賞準入選作。
量産型はダテじゃない!
柳実 冬貴
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